マーケティング戦略とは?立案の手順と成功事例11選を紹介

マーケティング戦略とは

現代の日本では市場のニーズが複雑化・多様化しているため、ただ商品やサービスを売り出すだけでは消費行動に結びつかない可能性があります。
自社製品をより多くの顧客に届けシェアを拡大するためには、適切なマーケティング戦略を立案して実行することが大切です。
また、市場での自社の立ち位置や顧客ニーズ、自社製品の特徴を活かした戦略を立てるには、さまざまなフレームワークを活用した多角的な分析も求められます。

そこで本記事では、マーケティング戦略を立案する際の手順と活用できるフレームワーク、成功するためのポイントについて解説しています。また、実際の企業によるマーケティング戦略の成功事例も紹介しているので、自社の戦略に取り入れるのもおすすめです。

新商品を効果的に売り出したい方や自社のマーケティング戦略を見直したい方は、ぜひ参考にしてください。

1.マーケティング戦略とは

マーケティング戦略とは、市場における自社の立ち位置や顧客のニーズをもとに「どのような顧客」に「どのような商品・サービス」を「どのような価格」で提供するのかを決定することです。
ほとんどの商品・サービスには競合が存在することから、自社製品を選ぶ理由や差別化のポイントを作り出す必要があります。自社にしかない価値を明確にして、ターゲット層に向けて適切に周知する方法を考えることが大切です。
また、会社の資源となる「ヒト・カネ・モノ」には限りがあるため、これらのリソースを活用して効率よく売上を伸ばし続けることが求められます。

マーケティング戦略とは


2.マーケティング戦略が重要な理由

マーケティング戦略が重要とされる理由として、消費者のニーズの多様化があげられます。
現代は市場に多くのモノがあふれているため、商品の価値だけでは市場の拡大は難しく、顧客から選んでもらうことはできません。また、情報化社会によって消費者の購入行動やニーズが細分化しており、近年はSNSなどのオンラインによる消費も活発化しています。

これらの影響を受けて、企業は自社製品の内容・販売場所・プロモーションなどを消費者のニーズに合わせて考えていく必要が生まれました。効果的なマーケティング戦略を立てて実行することで、競合との差別化を実現し、知名度や売上の向上が可能になります。



3.マーケティング戦略を立てる手順

マーケティング戦略を立てる手順

3-1.内部環境・外部環境を分析する

マーケティング戦略の立案で最初に行うのが、内部環境と外部環境の分析を通した自社の状況把握です。
外部環境では市場や業界の動向・競合他社の状況・顧客のニーズなどを分析し、内部環境では自社の強みや弱み・自社で保有している経営資源などの分析を行います。
外部環境と内部環境を明確にすることで、市場における自社の立ち位置や競合他社の比較を判断できるようになります。

ただし、分析結果が自社にとって都合のいいものにならないよう注意しましょう。客観的な視点を忘れてしまうと、実態とかけ離れた分析になってしまう可能性があります。

内部環境外部環境を分析する

3-2.セグメントを細分化する

内部環境・外部環境の次に行うのが、セグメントの細分化です。セグメントの細分化はセグメンテーションとも呼ばれ、自社の顧客をニーズ・属性・購買行動などによってグループ分けすることを指します。
人によって年齢・性別・居住地が異なり、欲しい商品や商品に求めるものも多岐に渡ります。セグメンテーションを行うことで、自社の顧客にはどのような層が多いのかの判断が可能です。

自社商品・サービスに関心を持ってくれる人の特徴が明らかになると、その後のマーケティングにも役立ちます。


3-3.ターゲットを設定する

セグメントを細分化した結果に基づいて、商品・サービスの具体的なターゲットを設定します。どのような層の顧客に自社製品を届けたいか明確にすることで、効率的なプロモーション方法を考えやすくなるでしょう。
また、商品・サービスによって競合他社の動向や顧客の性別・年齢層は異なるため、需要の高い市場の選定が重要です。

マーケティング戦略でターゲットを設定する

3-4.提供する価値を決定する

ここまでの分析やターゲティングをもとに、自社の商品・サービスを通して顧客にどのような価値を提供するのか決定していきます。
消費者の多くは、商品そのものよりも提供された価値に魅力や必要性を感じて購入するのが一般的です。

たとえば工具のドリルを購入する人は、ドリルの「穴を開けられる」という価値を求めています。有名な話ですが、「ドリルではなく穴を売れ」ということです。
自社製品を購入してもらうには、提供できる価値を明確にし必要とする層に届けることが大切です。

ただし、競合他社も同じ価値を提供する製品を販売していることも多いため、自社ならではのメリットや他社にない強みをアピールする必要があります。マーケティング戦略立案のために、この「提供する価値」を練り上げる必要があります。

マーケティング戦略で提供する価値を決定する

3-5.商品・サービスの提供方法を決める

自社商品・サービスの提供価値を設定したら、その価値をどのようなプロセスでアピールし、顧客へ提供するのかを決定します。
近年では店舗で直接販売するだけでなく、インターネット通販やSNSといったオンラインでの販促も効果的です。

ただし、ターゲット層によっては特定の販路が届きにくいこともあるため、より確実な方法を選択することが売上アップの近道といえるでしょう。
また、提供方法とあわせて、市場の相場や競合他社の設定価格を参考にしながら商品・サービスの販売価格を設定する必要があります。

マーケティング戦略で提供方法を決める

3-6.戦略の実施と評価を行う

マーケティング戦略を決定したら、実際に商品・サービスを市場で提供し、どのような結果が得られるか検証を行います。
ただし、どれだけ綿密にマーケティング戦略を組み立てても、すぐに成功するケースはあまりありません。
自社商品・サービスを売り出したあとも、PDCAサイクルを回して継続的な改善が必要です。売上や顧客の反応などをもとに、よりターゲット層の購入行動に直結するようなマーケティング戦略を練ることが求められます。



4.マーケティング戦略に活用できるフレームワーク

4-1.PEST分析

PEST分析とは、自社を取り巻く外部環境を政治・経済・社会・技術の4つの要素から分析するためのフレームワークです。
自社に迫る脅威や今後起こりうる市場の変化を予測し、適切な対策を考える際に役立ちます。
また、市場のトレンドや将来の分析にも活用できるため、自社商品・サービスの最適化やプロモーション戦略にも効果的です。

PEST分析

4-2.3C分析

3C分析とは、顧客・競合・自社の3つの観点から市場をリサーチするためのフレームワークです。
3C分析によって顧客のニーズや自社・競合他社の強みと弱みなどが明らかになるため、マーケティング戦略の立案や改善に役立ちます。
また、市場における自社の立ち位置を整理し、自社製品の特徴と顧客のニーズが合っているか判断する際にも有効です。

3C分析

4-3.SWOT分析

SWOT分析とは、外部環境・内部環境の視点から自社の現状を把握するためのフレームワークです。
具体的には、強み・弱み・機会・脅威の4要素に分類されます。クロス分析を用いることで、既存マーケティング戦略の改善点や課題を洗い出すのに効果的です。
また、自社が今後伸ばすべき強みや将来のリスクが明らかになるため、新規事業の計画を立てる際にも役立ちます。

SWOT分析

4-4.STP分析

STP分析とは、市場における自社の立ち位置や競合他社との関係性を分析するためのフレームワークです。
セグメンテーション→ターゲティング→ポジショニングの順で分析を行うことで、顧客のニーズの具現化や競合他社との差別化に役立ちます。また、市場のなかでターゲット層を細かく絞り込めるため、より効果的なプロモーションを考案したいときにも便利です。

STP分析

4-5.ファイブフォース分析

ファイブフォース分析とは、自社にとって脅威になりうる要因を5つの要素から分析するためのフレームワークです。
5つの要素には、競合他社の脅威・新規参入者の脅威・代替品の脅威・売り手の交渉力・買い手の交渉力が該当します。それぞれの脅威の関係性や自社にどれくらい影響を及ぼすのかが明らかになるため、マーケティング戦略を立てる際の市場調査として役立ちます。

ファイブフォース分析

4-6.バリューチェーン分析

バリューチェーン分析とは、自社商品・サービスが顧客に届くまでの間に連鎖していく価値を分析するためのフレームワークです。
ここでの価値とは顧客視点での付加価値をあらわし、企業によってそれぞれ異なります。価値をどのように加えていくのかを考えることで、自社にしかない強みや競合他社との差別化を生み出すのに効果的です。

ただし、商品・サービスが流通する一連の流れには関連企業や協業企業などが関わっていることが多いため、自社以外の働きかけも考慮する必要があります。

バリューチェーン分析

4-7.4P分析

4P分析とは、売り手側の視点から製品・価格・流通・プロモーションの4つの領域を分析するためのフレームワークです。
4P分析では、「どのような製品」を「どのような価格設定」と「流通経路」で「どのように販促するのか」を具体的に検討していきます。マーケティング・ミックスとも呼ばれ、STP分析の結果を実際の戦略に落とし込む際に活用されます。

4-8.4C分析

4C分析とは、買い手側の視点から顧客価値・顧客コスト・利便性・コミュニケーションの4つの要素を分析するためのフレームワークです。
4P分析に加えて4C分析も実施することで、顧客のニーズに沿ったマーケティング戦略を立案しやすいといった強みが生まれます。
両方の分析を組み合わせる際は、4C分析の結果から4Pの領域を設定し、マーケティング・ミックスにつなげる手法が一般的です。

4P4C分析

4-9.VRIO

VRIOとは、自社の商品・サービスを経済的価値・希少性・模倣可能性・組織の4つの視点から分析するためのフレームワークです。
自社商品・サービスによってどのような価値を提供できるか、独自性が高く簡単に真似されないか、組織体制は整っているかを判断するのに役立ちます。
VRIOによって自社の強み・弱みや経営資源を洗い出せるため、強みを活かしながら競合他社との差別を狙えるようなマーケティング戦略の立案に効果的です。

VRIO分析

4-10.PPM分析

PPM分析とは、自社の商品・サービスを市場成長率や市場占有率といった視点から分析するためのフレームワークです。
花形・金のなる木・問題児・負け犬の4つの領域を設定し、商品・サービスがどこに当てはまるか分析します。
市場における自社の立ち位置や課題を明確にできるため、マーケティングの立案や見直しに役立ちます。

PPM分析


5.マーケティング戦略を成功させるポイント

マーケティング戦略を成功させるポイント

5-1.自社商品・サービスのターゲットを絞り込む

マーケティング戦略を立案する際は、自社商品・サービスの特徴をもとにターゲットを絞り込むことが大切です。
たとえば、パソコンのなかでも製品によって「価格が安い」「性能が高い」「グラフィックがきれい」など、さまざまな特徴があります。
価格が安く操作性がシンプルなパソコンは初心者や高齢者、ハイスペックで画質が高いパソコンはゲームを楽しむ人といったように、製品の特徴から顧客の年齢層や趣味嗜好を具体化することが可能です。
さらにターゲット像が明確になれば、効果的なプロモーションの方法も考えやすくなります。

5-2.フレームワークを活用する

マーケティング戦略の立案・改善には、上記でも紹介したようなフレームワークの活用が効果的です。
フレームワークは、外部環境・内部環境の分析や自社と競合他社の客観視に役立つため、課題の抽出や意思決定を行う際に利用できます。
4C分析と4P分析のように組み合わせることで相乗効果を発揮するフレームワークもあるので、自社の状況に合わせた柔軟な活用が大切です。

5-3.マーケティングツールを活用する

販売データや顧客データなどを管理・分析し、戦略に反映させる際は、マーケティングツールの活用もおすすめです。
代表的なツールとして、営業支援のSFA・顧客管理のCRM・マーケティング活動の自動化を進めるMAなどがあげられます。
マーケティングツールは正確性とスピード感が高く、必要な情報を必要なタイミングで参照し、リアルタイムで分析できる点がメリットです。

そのほかにも、Webアクセスの解析ツールやBIツールといった便利なツールが多数展開されているため、他社事例などを参考に自社に合ったものを導入するとよいでしょう。

参考【実践】マーケティングオートメーションの活用術。MAツール活用の成功事例も解説

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5-4.KGI・KPIを設定して振り返る

マーケティング戦略に関する目標は、KGIとKPIの2つに分けて設定するとより効果的です。
KGIは「Key Goal Indicator」の略で「重要目標達成指標」を意味し、KPIは「Key Performance Indicator」の略で「重要業績評価指標」を意味しています。
KGIには経営課題に基づいた数値目標を設定し、KPIにはKGIで設定した目標を達成するためのスモールステップを設定するのが一般的です。

たとえば、KGIを「売上を前年より20%アップする」と設定したら、KPIは「売上を20%上げるために、毎月◯店舗と契約する」と具体的に設定するとよいでしょう。
KGIとKPIを活用することで、目標達成に向けた適切な段取りを組み立てられるようになります。



6.マーケティング戦略の主な種類

6-1.インバウンドマーケティング

インバウンドマーケティングとは、自社商品・サービスに興味がある見込み顧客に対してアプローチを行い、自発的に興味・関心を持ってもらうためのマーケティング戦略です。
マス広告やDMなどを通して、消費者にアプローチするアウトバウンドマーケティングと異なり、あくまでも顧客側に見つけてもらうことを目的としています。

インバウンドマーケティングでは、Webサイト・SNS・メルマガなどで価値のあるコンテンツを発信して情報収集フェーズの見込み顧客と接点を作り、購入意欲を育てていく点が特徴的です。
効果が出るまでに時間がかかるものの、アウトバウンドマーティングと比べて費用を抑えられるうえに、自社ブランドのファンを醸成しやすいといった強みがあります。

インバウンドマーケティング

6-2.コンテンツマーケティング

コンテンツマーケティングとは、顧客にとって価値のあるコンテンツを発信し、見込み顧客や自社の顧客にアプローチを行うマーケティング戦略です。
インバウンドマーケティングと似ていますが、コンテンツマーケティングはコンテンツの制作と配信をより重視している点が特徴的です。
集客だけでなく顧客とのコミュニケーションツールとしても活用でき、自社のファンに育てるきっかけづくりとしても役立ちます。

また、企業側が一方的な営業アプローチを行うわけではないため、現時点で購入意欲が薄い人とも長期的な関係性を築きやすい点もメリットです。ただし、売上に結びつくまでには時間がかかるため、時間をかけて継続的に実施する必要があります。

コンテンツマーケティング
参考コンテンツマーケティング実践ガイド【入門編】

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6-3.検索エンジンマーケティング

検索エンジンマーケティングは別名SEMとも呼ばれ、Googleの検索結果で上位表示されるように自社のコンテンツを最適化する戦略です。
ノウハウがあれば無料で実施できるうえに、安定した集客が期待できるといったメリットがあります。

Googleでキーワード検索を行うユーザーの多くは明確な問いを持っているため、検索上位に表示されているサイトはクリックされる確率が高くなります。さらに、コンテンツ内に自分の問いに対する解決策が提示されていれば、商品・サービスの問い合わせや購入といったアクションへ誘導しやすくなるでしょう。

ただし、専門知識が求められるうえに検索エンジンの仕様やトレンドは随時変化するため、継続的な情報収集と改善が必要です。

検索エンジンマーケティング

6-4.ソーシャルメディアマーケティング

ソーシャルメディアマーケティングとは、インスタグラム・X・LINE・FacebookといったSNSを自社商品・サービスのプロモーションに活用するマーケティング戦略です。
SNSは情報をリアルタイムで発信できるうえに無料で始められるため、ターゲットに向けて自社の情報を幅広く届けられます。

また、インフルエンサーなどに自社ブランドの話題を拡散してもらうことで、知名度の獲得やブランディングにも効果的です。
ユーザーと相互でコミュニケーションが取りやすく、顧客のニーズや商品の意見・感想を調査したいときにも役立ちます。

ただし、コミュニケーションが取れる分炎上しやすいといったリスクもあるため、情報発信の内容には慎重な見極めが必要です。
さらに現在では多くの企業でソーシャルメディアマーケティングを行っているので、競合他社との差別化を図らないと自社のSNSを見てもらえない可能性があります。

ソーシャルメディアマーケティング

6-5.メールマーケティング

メールマーケティングとは、メールを通じて見込み顧客や顧客にアプローチを行い、反応に応じてコンバージョンに導くためのマーケティング戦略です。
自社で保有するリストからメール広告・メルマガ・ステップメールなどさまざまな手法でメールを送り、顧客とのコミュニケーションに活用します。

現在はSNSやチャットツールが台頭しているものの、日常的に使用するメールは多くのユーザーにとって馴染みが深いため、メールマーケティング市場は今後も拡大し続けることが予測されています。

ただし、コンテンツマーケティングやソーシャルメディアマーケティングと同様、成果が出るまでに時間がかかる点がデメリットです。また、顧客からメール購読を解除されないよう、コンテンツ制作に力を入れる必要があります。

メールマーケティング


7.マーケティング戦略の成功事例

7-1.RIZAP

https://www.rizap.jp/

RIZAP株式会社が運営するプライベートジムのRIZAPは、「確実に成果を出せるダイエット」というブランディングに成功し急成長を遂げています。
当時からダイエットビジネスは多数存在していましたが、「ダイエットは続かず失敗しやすい」といったイメージが一般的でした。そこでRIZAP社が取ったマーケティング戦略は次のとおりです。
まず、ターゲットを「お金をかけてでも確実にダイエットに成功したい高収入層」に設定し、マンツーマンのパーソナルトレーニングと徹底した食事指導で差別化を図りました。また、RIZAPの効果を演出にこだわったCMで積極的にアピールし、認知度を高めたのも成功の大きな要因といえます。

7-2.アドビ

https://www.adobe.com/jp/

IllustratorやPhotoshopなどで有名なアドビ株式会社では、自社のマーケティングツールの売上を伸ばすために、検索エンジンマーケティングの1つであるSEOに注力しました。
まず3ヶ月にわたってWebサイトの分析を徹底的に行った結果、「マーケティングツールの導入事例を紹介した記事の検索順位が上がらない」といった課題を発見しています。
そこで、該当のページに内部リンクを設置するなどWebサイトの最適化を実施し、検索結果に自社ページが上位表示させることに成功しました。

7-3.スターバックス

https://www.starbucks.co.jp/index.html

世界中で高い人気を誇る大手カフェチェーンのスターバックスでは、4P分析を活用したマーケティング戦略で他社との差別化に成功しています。スターバックスでは、自社の特徴を「Product(製品)=高品質なコーヒー」「Price(価格)=高価格」「Place(流通)=立地がよく人の往来が多い場所」「Promotion(プロモーション)=口コミを重視し広告宣伝をほとんど行わない」と分析しました。
この結果をもとに、「高品質のコーヒーを心地よい空間と質の高いサービスでゆったり楽しめる」といった他社にはないブランディングを行い、唯一無二の存在を獲得しています。また、女性をターゲットにして、外観や店内のデザインにこだわった点も差別化のポイントにつながりました。

7-4.レッドブル

https://www.redbull.com/jp-ja/

レッドブル・ジャパン株式会社が提供する「レッドブル」は、独自のポジショニングに成功して人気となった商品です。それまで、栄養ドリンクのような滋養強壮剤は「疲労回復」をコンセプトとしているものが多く、働く中高年層がターゲットとされていました。
しかし、レッドブルでは「翼を授ける」のキャッチコピーを掲げ、これから勉強・仕事・スポーツなどを頑張るための「エネルギー注入」をコンセプトとしています。さらに、スポーツカーによる派手な宣伝やクラブイベントなどの開催を通じて、ターゲット層を若年層にも拡大していきました。
その結果、滋養強壮剤のなかでも他社との差別化に成功し、自社ならではのポジションを確立しています。

7-5.ユニクロ

https://www.uniqlo.com/jp/ja/

国内外で高い知名度を誇るアパレルブランドの株式会社ユニクロでは、オンライン消費の増加にあわせたマーケティング戦略を実施しています。たとえば公式アプリによって顧客とオンライン上で接点を持ち、会員限定のクーポンを配布することで実店舗への誘導に成功しました。また、オンラインストアでの購入時に「店舗受け取りは送料無料」とすることで、普段実店舗に足を運ばない顧客との接点も生み出しています。さらに、「実店舗の商品バーコードを読み取り、在庫やレビューなどを確認できる機能」を搭載し、実店舗での利便性をより高めている点も強みです。そのほかにも、ユニクロではインスタグラムやXといったSNSにも力を入れており、新商品やコーディネート例の投稿からオンラインストアへ、オンラインストアから実店舗へ誘導する導線を確立しています。

7-6.ライフネット生命

https://www.lifenet-seimei.co.jp/

日本初オンライン専門の生命保険会社であるライフネット生命は、マーケティング戦略によってターゲット層の拡大に成功しています。かつて保険には、「手続きが煩雑で仕組みがわかりづらい」「保険料が高い」といった、ネガティブイメージが浸透していました。
そこでライフネット生命では、ターゲットを「保険料に多額の費用を割けない若年層・子育て世代」に定め、保険料を従来の半額に設定しました。さらに商品内容のわかりやすさや手続きの利便性に注力し、24時間365日の申し込みを可能としたことで、他社との差別化を図っています。
これらのマーケティング施策の結果、ターゲット層である20代〜40代から高い支持を獲得しました。また、手続きをオンラインに限定し、広告をWebやSNSに絞ったことで、広告費や人件費の削減を実現しています。

7-7.スタディサプリ

https://studysapuri.jp/

株式会社リクルートが提供するオンライン学習サービス「スタディサプリ」は、マーケティング戦略によってユーザーの多数獲得に成功しています。株式会社リクルートでは「高校生全体のうち7割が経済的・地域的な理由で宿や予備校に通えない」という調査結果をもとに、スタディサプリのターゲット層を「経済的・地域的な理由で宿や予備校に通えない高校生」に絞り込みました。
さらにサービスをリリースしたあとも、顧客のニーズにあわせて学習管理システムや新たな料金プランを追加し、定期的に改善を続けました。その結果、現在では全国の高校で導入されるほどの人気のサービスに成長し、学校向けの教育事業に大きな影響を与えています。

7-8.iPod

https://support.apple.com/ja-jp/

世界中で人気を誇ったデジタル音楽プレーヤー・iPodの背景には、Apple社によるマーケティング戦略があります。当時、デジタル音楽プレーヤーはソニーや松下電器などが高いシェアを得ており、後発であるApple社は差別化を図る必要がありました。
そこでiPodではデザイン性にこだわり、製品発表会にはモデルを起用するなどファッションアイテムに近いブランディングを実施しました。その結果ユーザーは、「iPodを使っている自分」のポジティブな姿をイメージしやすくなり、大きな注目を集めることに成功しています。
さらに、iTunesとの連携によって利便性が向上したことも強みになりました。こうしたマーケティング戦略によってiPodは、急激にシェアを拡大し音楽産業に大きな影響を与えました。

7-9.コカ・コーラ

https://www.coca-cola.com/jp/ja

コカ・コーラはプロモーションを工夫することで、ブランドの認知度向上に成功しています。コカ・コーラでは、「シェア・ア・コーラ」と呼ばれるキャンペーンを実施し、ユーザーに対してコーラを飲む様子をSNSにシェアするよう促しました。
こうして投稿が拡散されることで、コーラが多くの人々の目に留まり、広告効果の最大化につながりました。
さらに、「シェア・ア・コーラ」キャンペーンを通じて商品の認知度をアップさせたことで、競合他社の売上が伸び悩んでいるなか、コカ・コーラは売上・利益の回復を達成しています。

7-10.土屋鞄製作所

https://tsuchiya-kaban.jp/

革製品の制作・販売を手掛ける土屋鞄製作所では、コンテンツマーケティングによってブランド力や認知度の向上に成功しています。
土屋鞄製作所の強みである品質の高さやこだわりをアピールできるコンテンツを制作し、SNS・Webサイトなどで定期的に配信することで、多くのファンを獲得しました。さらに商品の訴求を行うのではなく、スタッフの日常などを投稿することで、共感や親しみを集めやすくしています。
このような顧客との中長期的な関係づくりが功を奏し、競合他社ではなく土屋鞄製作所を選ぶ理由を生み出しています。

7-11.ハーゲンダッツ

https://www.haagen-dazs.co.jp/

ハーゲンダッツジャパン株式会社が提供するアイスクリーム・ハーゲンダッツは、マーケティング戦略によって独自のポジショニングに成功しています。一般的にアイスクリームのターゲット層は子どもに設定されており、低価格で万人受けするフレーバーの商品が多く展開されています。
しかし、ハーゲンダッツはターゲット層をあえて大人に設定し、高級感のある特別なアイスクリームとしてのブランディングを確立しました。その結果、競合他社との差別化につながり、「働く世代が自分へのご褒美としてハーゲンダッツを選ぶ」といった、アイスクリームに対する新たな購買行動を生み出しています。



まとめ

顧客のニーズに合わせた効果的なプロモーションには、適切なマーケティング戦略が重要です。
マーケティング戦略を立案する際は、自社と競合他社の立ち位置を分析し、具体的なターゲットを設定したうえで、自社商品・サービスをどのようなプロセスで販売し、顧客にどのような価値を提供するのかを決定します。

また、マーケティング戦略を実行したあとは結果の評価と分析をすることで、PDCAサイクルを回して改善を繰り返すことが大切です。PEST分析・4P分析・4C分析といったフレームワークを活用することで、マーケティング戦略に必要な分析に役立てられるでしょう。
マーケティング戦略は、コンテンツマーケティングやソーシャルメディアマーケティングなどさまざまなので、製品やターゲット層の特長に合わせて効果的な方法の選定が必要です。自社商品・サービスの市場を効果的に拡大させていきたい方は、本記事をぜひ参考にしてください。

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