図解でわかる!SWOT分析とは?分析の進め方と事例6選を紹介

SWOT(スウォット)分析とは、経営や事業の戦略を決定する際によく使われるフレームワークです。
自社の外部環境と内部環境を強み(Strength)・弱み(Weakness)・機会(Opportunity)・脅威(Threat)の4つの観点から分析することで、企業や事業の現状を把握できます。

自社の強みや改善点、市場から受ける影響、将来的なリスクなどを客観的に評価するのに効果的な分析方法ですが、どのように実施すればよいかわからないという方は多いのではないでしょうか。

また、ただ分析方法を知っているだけではなく、SWOT分析を行う目的や考え方を正しく理解していなければ、十分な効果を発揮できない可能性があります。
本記事では、SWOT分析の概要や進め方に加え、SWOT分析後に要素をクロスして分析するクロスSWOT分析の手法を解説しています。また、実際の企業を例として用いた分析事例も図解付きで紹介しています。戦略決定にSWOT分析を活用したい方はぜひ参考にしてください。

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目次

1.SWOT分析の概要

1-1.SWOT分析とは

SWOT分析とは、企業や事業の現状を強み・弱み・機会・脅威という4つの観点から分析するためのフレームワークです。SWOTはそれぞれの観点の頭文字を取ったもので、下記のように分類されています。

  • 強み(Strength):内部環境×プラス要因
  • 弱み(Weakness):内部環境×マイナス要因
  • 機会(Opportunity):外部環境×プラス容易
  • 脅威(Threat):外部環境×マイナス要因

1-2.SWOT分析の目的

SWOT分析の主な目的は、効果的な経営戦略やマーケティング戦略の立案です。
効果的な戦略を立てるには、自社や競合他社の現状・市場の動向などを客観的に把握する必要があります。SWOT分析の活用によって、企業や事業を取り巻くさまざまな要素をわかりやすく分類することが可能です。
また、SWOT分析の結果は、3年後や5年後といった未来で自社や市場がどのように変化しているのかを予測する際にも役立つでしょう。

1-3.SWOT分析を実施するタイミング

SWOT分析は、事業計画を作成するタイミングで実施するとよいでしょう。
SWOT分析をすることで自社の現状や競合他社との比較、市場の将来性などが洗い出されるため、より効果的な戦略の立案につながります。
外部環境から市場の動向を分析し、自社の立ち位置を客観視できれば、新規開拓や事業撤退を検討する際にも効果的です。

また、SWOT分析は戦略を立てる前に実施されるだけでなく、決定した戦略を評価するために行われることもあります。

2.SWOT分析における観点

2-1.外部環境

外部環境とは、企業や個々の社員を取り巻く外的な環境のことです。
SWOT分析でいうと、「機会」と「脅威」が該当します。自分たちでは関与できないものがほとんどで、たとえば景気や社会の動向、法律などがあげられます。

外部環境の具体例は、以下のとおりです。

外部環境に関する情報は公的機関の情報や新聞やニュースなどで情報を集める他に、ユーザーに対してアンケート調査を実施するのも有効です。

2-2.内部環境

内部環境とは、企業や個々の社員が持っている「強み」や「弱み」といった要素です。外部環境とは異なり自らの意思でコントロールしやすい点が特徴的で、弱みも努力や工夫次第で改善できる場合があります。

内部環境の具体例は、以下のとおりです。

内部環境を分析する際は、競合他社の情報と比較しながら行うと、より客観的な視点を取り入れやすくなるでしょう。

2-3.S:強み(Strength)

SWOT分析における「強み」とは、経営戦略を立てるうえで競合他社と比べて優位に立っている要素のことです。たとえば、自社が持つブランド力や知名度、サービスの独自性などがあげられます。

強みの具体例は、以下のとおりです。

強みを洗い出す際は、「顧客が自社サービスを選ぶ理由」「競合他社と差別化できているポイント」を客観的に分析するとよいでしょう。また、今は強みとはいえない要素でも、今後注力していくことで大きく成長する場合があります。

2-4.W:弱み(Weakness)

SWOT分析における「弱み」とは、自社が苦手としている要素や、他社と比べて劣っている要素のことです。そのほかにも、目標達成に必要なもののまだ実現できていないものや、時代の流れから遅れてしまっているものも弱みに該当します。

弱みの具体例は、以下のとおりです。

今は弱みに当てはまるものでも、今後の働きかけによっては強みに変化することがあります。ただし、原因が外部環境にあるものは「弱み」ではなく「脅威」に当てはまり、自分たちでは改善が難しいため混同しないように注意が必要です。

2-5.O:機会(Opportunity)

SWOT分析における「機会」とは、自社にとってチャンスとなるような社会や市場の動きです。機会を活かすことで、自社の商品・サービスの売り上げを大きく伸ばしたり、市場を拡大できたりする可能性があります。たとえば、新型コロナウイルスの影響で巣ごもり需要が生まれ、自宅で快適に過ごせるようなアイテムのニーズが拡大しました。

機会の具体例は、以下のとおりです。

機会を分析する際は、できるだけ第三者の目線から会社を見つめ直すことが大切です。また、自社にとって何が機会になるのかを整理することで、自社の立ち位置を客観的に判断しやすくなります。

2-6.T:脅威(Threat)

SWOT分析における「脅威」とは、自社の商品やサービスの売れ行きに悪い影響を与える社会や市場の動きのことです。また、自社のポジションを脅かすような要素も脅威に当てはまります。たとえば、新型コロナウイルスの影響で外出を自粛する動きが起こり、飲食業界や旅行・レジャー業界は大きな打撃を受けました。

脅威の具体例は、以下のとおりです。

脅威は弱みとは異なり、自分たちでは改善が難しいものがほとんどです。脅威とそれによって起こりうるリスクを明らかにしたうえで、適切な対策を考えていくことが求められます。また、脅威を整理することによって、これまで見えていなかった自社の課題が見つかる場合もあります。

3.SWOT分析の進め方

3-1.目的を設定する

SWOT分析をはじめる前に、分析を行う目的を具体的に設定しておきましょう。目的がはっきりしていないと、SWOT分析で本来必要としていた結果を出せない可能性があります。
また、「SWOT分析を実施すること」自体が目的にならないよう注意が必要です。何のためにSWOT分析を取り入れるのかを事前に明確化し、認識のズレが起きないようチーム全体に共有してください。

3-2.外部環境を分析する

外部環境が内部環境の分析結果に影響を与える場合があるため、SWOT分析では外部環境から分析を行います。
市場や競合他社の動向・景気や経済の状況・事業に関する法規関連などさまざまな側面から情報を収集し、自社にとって「機会」か「脅威」かを判断しましょう。
外部環境の分析には、PEST分析やファイブフォース分析といったフレームワークが効果的です。それぞれの概要については別の項目で具体的に解説します。

3-3.内部環境を分析する

外部環境の分析が完了したら、内部環境として自社の強みと弱みの分析を行います。
自社に関する内容ですが、自分たちの主観だけでなく、外部環境や競合他社との比較をふまえての判断が大切です。客観的な視点がほしい場合は、数値やデータの活用が効果的です。内部環境の分析には、4P分析や4C分析といったフレームワークが役立ちます。それぞれの概要については別の項目で具体的に解説します。

3-4.分析の結果を表にまとめる

外部分析・内部分析の結果がすべて揃ったら、それぞれの内容を表にまとめていきましょう。
表の縦列には上から機会→脅威の順に書き、横列には左から強み→弱みの順に書くのが一般的です。作成した表は次の手順で活用するため、できるだけ読みやすいように記録してください。表に直接書き込む方法だけでなく、あらかじめ分析内容を付箋に記載し、表の該当箇所に貼り付けていく方法もおすすめです。

3-5.クロスSWOT分析を行う

SWOT分析で強み・弱み・機会・脅威をそれぞれ整理したら、次はクロスSWOT分析を実施して具体的な戦略に落とし込みましょう。クロス分析では、4つの要素を以下のように掛け合わせて分析を行っていきます。

  • 強み × 機会

強みと機会を掛け合わせることで、自社の強みを積極的に使いながら、今あるチャンスを最大限に活かす方法を分析できます。企業や事業の成長を目指したい場合に効果的です。

  • 強み × 脅威

強みと脅威を掛け合わせることで、自社の強みを活かして脅威によるリスクを回避・軽減するための方法を分析できます。また、脅威をビジネスチャンスに変えられないか検討する際にも役立ちます。

  • 弱み × 機会

弱みと機会を掛け合わせることで、自社の弱みによって機会を逃さないようにするための方法を分析できます。弱みを克服するための改善策を立てつつ、ビジネスチャンスをどのように活かしていくか考えることが大切です。

  • 弱み × 脅威

弱みと脅威を掛け合わせることで、最悪の事態を想定してリスクを最小限に抑えるための方法を分析できます。また、自社の弱みを正しく理解し、脅威による影響をできるだけ受けないようにすることも大切です。この掛け合わせでは、事業の撤退や縮小も検討する場合があります。

クロスSWOT分析が完了したら、それぞれの結果をもとに今後の行動を具体的に計画していきましょう。また、戦略の内容は定期的に見直し、必要に応じて分析のやり直しや計画の変更を行うことが重要です。

4.外部環境の分析に効果的なフレームワーク

4-1.PEST分析

PEST分析とは、自社を取り巻く外部環境をマクロ視点で分析するためのフレームワークです。

政治(Politics)・経済(Economy)・社会(Society)・技術(Technology)の4つの観点から分析を行い、それぞれの要素が自社に与える影響を洗い出していきます。
PEST分析によって自社の課題や市場の動向などを把握できるため、将来の予測を立てたい場合にも効果的です。

4-2.ファイブフォース分析(5F分析)

ファイブフォース分析(5F分析)とは、収益性に影響を及ぼす外部要因を分析するためのフレームワークです。

新規参入業者の脅威・買い手の交渉力・供給企業の交渉力、代替品の脅威・競争企業間の敵対関係といった5つの競走要因から分析を行い、競合他社の状況や業界全体の収益構造を判断していきます。
あくまで企業ではなく業界を分析する手法ですが、自社が収益を上げるために必要な要素の明確化に役立ちます。

5.内部環境の分析に効果的なフレームワーク

5-1.4P分析

4P分析とは、Product(商品)・Price(価格)・Place(流通)・Promotion(販売促進)の4つの観点から自社の商品やサービスを分析するためのフレームワークです。
市場や顧客の環境を調査し、他社にない自社独自の強みや弱みを見つける際に役立ちます。また、どのような商品をどこでどのように販売するかといったマーケティング戦略の立案にも効果的です。

5-2.4C分析

4C分析とは、Customer Value(顧客価値)・Cost(顧客コスト)・Convenience(利便性)・Communication(コミュニケーション)の4つの観点から自社の商品やサービスを分析するためのフレームワークです。

4P分析は企業側の視点で行われるのに対し、4C分析では顧客の視点に立って自社の強みを分析するといった特徴があります。
自社の事業が顧客にとって、どの程度価値があるのかを判断する際にも効果的です。

6.SWOT分析を活用するためのポイント

6-1.目的・前提条件を明確にする

SWOT分析の効果を最大限引き出すためには、分析を行う目的を事前にはっきりさせておくことが大切です。「SWOT分析の結果を、どのように戦略に落とし込むか」「最終的に経営や事業をどのように進めたいか」がはっきりしていないと、調査や分析の結果が途中でブレてしまう恐れがあります。
自社や競合企業の現状・ターゲットとなる顧客の属性などを明確に整理し、チーム内で共有しておきましょう。

6-2.最適なメンバーを選定する

SWOT分析では、強み・弱み・機会・脅威を多角的な視点から客観的に分類することが求められます。そのため、SWOT分析に関わるメンバー選びは重要なポイントの1つです。
経営陣・営業職・商品企画職・エンジニアなどさまざまな立場からの意見を集約し、漏れがないように要素を洗い出せるとよいでしょう。
また、常に同じメンバーで分析を行うのではなく、SWOT分析を実施する目的や対象とする顧客層に合わせて最適な人選が大切です。

6-3.メリットとデメリットを把握しておく

SWOT分析などのフレームワークは、あらかじめメリットとデメリットを理解したうえでの利用が必要です。SWOT分析の場合、以下のようなメリットとデメリットが考えられます。

SWOT分析のメリット

  • 外部環境と内部環境の両方の視点で分析を行うため、自社の全体的な状況を客観的に捉えられる
  • 自社の商品やサービスに関する理解が深まり、業務へのモチベーション向上につながりやすい
  • ビジネスチャンスを活かしながらリスク対策を行うといった、バランスのよい戦略を立てやすい

SWOT分析のデメリット

  • 内部環境の要素を強みか弱みのどちらかに必ず分析しなければいけないが、内容によっては簡単に判断できないことがある
  • 目的が明確になっていないと結果がブレることがある
  • 極端な結果になることがある

7.SWOT分析の事例6選

SWOT分析の例として、実際の企業を分析した事例をご紹介します。わかりやすいように、誰しも知るような大手企業を分析した例です。ここでの分析は、著者とミモズカンパニーの独断による内容ですので、実態とはそぐわない場合もあるかと思います。SWOT分析の実例をご紹介する目的ですので、あらかじめご了承ください。

7-1.マクドナルド

大手ファーストフードチェーンのマクドナルドをSWOT分析すると、以下のような分析結果が想定されます。

マクドナルドでは高い商品開発力を活かし、有名なお菓子・スイーツとのコラボ商品や月見バーガー・三角チョコパイといった季節メニューなど、数々の人気商品を生み出しています。また、近年では新たにマックカフェを展開し、若い女性からも支持を得られるようなスイーツ系の商品を多数販売しています。

7-2.ソニー

大手総合電機メーカー・ソニーをSWOT分析すると、以下のような分析結果が想定されます。

ソニーは多角化戦略に成功しており、価格競争に巻き込まれることなくさまざまな収益構造を確立しているといえます。またブランド力の高さから、商品価格にかかわらず「ソニーだから買いたい」と選んでもらいやすい点も大きな強みです。ただし、アジアで再び市場を拡大していくためには、韓国のサムスンなどの競合他社に打ち勝つ必要があります。

7-3.IKEA

日本でも高い人気を誇る家具メーカーのIKEAをSWOT分析すると、以下のような分析結果が想定されます。

IKEAでは、日本に合わせた広告活動として、四季ごとにイベントを開催できるショールームを設置しました。また、接客に注力して競合他社との差別化をはかり、国内における店舗数を増加させています。

7-4.ヤマトホールディングス

大手宅配業者のヤマトホールディングスをSWOT分析すると、以下のような分析結果が想定されます。

ヤマトホールディングスでは、2020年にデジタルトランスフォーメーションとして新たな戦略を打ち出しました。自宅以外の指定場所配達の実施や利用シーン別のプラットフォームの提供など、インターネット通販によるニーズや利便性の向上を考慮した施策が行われています。

7-5.Apple

iPhoneやMacなどで有名な多国籍テクノロジー企業のAppleをSWOT分析すると、以下のような分析結果が想定されます。

これまでスマートフォンの先駆者として市場を牽引してきたAppleですが、近年はデバイスの販売数が高止まりしています。また、Androidの台頭により、スマートフォンのシェアが他社に抜かれるようになってきました。しかしAppleでは、デバイス事業だけでなくWebサービス事業にも注力しています。また、電気自動車への参入も視野に入れるなど、さらなる事業拡大を進めているようです。

7-6.トヨタ

自動車メーカーのトヨタをSWOT分析すると、以下のような分析結果が想定されます。

トヨタでは、ソフトバンクと共同で移動サービス事業を立ち上げたり、モビリティサービスプラットフォームを連携したりと、従来の自動車製造から事業の幅をさらに広げています。また、認知度を高めるためのプロモーション戦略にも力を入れている他、車離れが進む若年層に対しても、購入意欲を促進するような自動車開発を目指しています。

8.まとめ

本記事では、SWOT分析の詳細や実際の分析事例について解説しました。SWOT分析を活用することによって、企業の強みや改善点、将来予測されるビジネスチャンスやリスクを客観的に見極められます。また、経営戦略の立案にあたり、現状への理解を深める際にも役立ちます。そのほかにも、競合他社と差別化を図りシェアを拡大させたい場合にも効果的です。

しかし、SWOT分析は一度実施しただけで「終わり」ではありません。自社を取り巻く外部環境は目まぐるしく変化するため、PEST分析を取り入れながら、現在だけでなく数年後を見据えた判断が必要です。さらに、弱みをそのままにするのではなく、強みに転換させる取り組みを戦略に落とし込むこともできるのではないでしょうか。

今回紹介したSWOT分析の進め方やほかのフレームワークを活用しながら、ビジネスチャンスが広がるような戦略を立てていけるとよいでしょう。

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