カスタマージャーニーマップ(CJM)完全ガイド:カスタマージャーニーマップの理解から最適化までの実践的アプローチ

カスタマージャーニーマップ(CJM)は、顧客との接点を適切に把握し、企業が提供する価値を最大化するための強力なツールとして急速に注目を集めています。

この視覚的なマッピング手法では、顧客が商品やサービスとどのように関わり、そして経験を通じてどのような感情や反応を持つのかを一連のステップとして表現します。カスタマージャーニーマップを効果的に活用することで、企業は顧客のニーズや課題を正確に把握し、その解決策を的確に提供できるようになります。

本記事では、カスタマージャーニーマップの基本的な理解から作成方法、作成時から作成後のポイントについて具体的に解説いたします。特に実務で直面するカスタマージャーニーマップ作成時の注意点や、制作プロセスにおける一般的な誤りを避け、効果的なマッピングを構築するヒントも詳細にわたってご紹介します。様々な業界や業態において、顧客中心のマーケティングを実践するためのバイブルとしてお役立てください。



1.カスタマージャーニーマップの定義と重要性

カスタマージャーニーマップ(Customer Journey Map: CJM)は、今や多くの企業からその有効性が広く認識されています。顧客のニーズや感情を可視化することで、企業はどのポイントで顧客とより深く繋がり、価値を提供できるかを明確に把握することができます。例えば、あなたがオンラインショッピングサイトを運営しているとしましょう。顧客がサイトを訪れ、商品を検索、比較、購入し、最終的にその商品を使ってフィードバックを行うまでの一連のステップをカスタマージャーニーマップを使ってマッピングすることによって、各ステップで顧客が抱える可能性のある疑問や不安、そしてその時点で最も必要としている情報やサポートを明示し、それを満たすためのコンテンツや機能をサイト上で提供することができます。お客様一人ひとりの行動を理解し、その旅をより豊かで満足度の高いものにするツール、それこそがカスタマージャーニーマップです。まずは、カスタマージャーニーマップの具体的な定義、目的、基本構造、そして実際の活用事例について詳しく見ていきましょう。

1-1.カスタマージャーニーマップとは

カスタマージャーニーマップは、ビジネスと顧客間の相互作用を系統立ててビジュアルに表現したフレームワークです。「カスタマー」は顧客を、「ジャーニー」は顧客が経験するすべての接触ポイントを通じた"旅"を、「マップ」はそのプロセスをビジュアル化したものをそれぞれ指します。

まず、個別の顧客が商品やサービスに初めて触れた瞬間から購入、利用、そしてロイヤルティが生まれる(もしくは生まれない)ポイントまで、その全過程を一つの"旅"と捉えるのがカスタマージャーニーマップです。この"旅"は顧客が企業のサービスとどのようにインタラクトし、どのような経験をし、そしてどのように感じるのかというプロセス全体を表します。

顧客の経験や行動、感情を一連のタッチポイントでカスタマージャーニーマップを用いて視覚的に整理することで、顧客が製品やサービスに接触し、関わり、最終的に購入するプロセス全体をマッピングします。これにより、顧客が感じていること、ニーズ、問題点などを詳細に描き出し、サービスの効果的な打ち出し方や改善ポイントを見極めることが可能になります。このようにカスタマージャーニーマップは、企業と顧客とのインタラクションの全体像を一目で理解可能なビジュアルな地図として提示し、更には顧客の視点を重視してそのエクスペリエンスを一貫したストーリーとして描写することができるツールなのです。


1-2.カスタマージャーニーマップの目的

カスタマージャーニーマップは、ユーザーエクスペリエンス(UX)を向上させる手段として採用されます。UXは、ユーザーが製品、システム、サービスを利用する過程で得る全体的な感じや印象を指し、そのデザイン、機能性、そして使いやすさが顧客の期待や目的にどれだけ応え、満足をもたらしているかを評価するものです。具体的には、カスタマージャーニーマップは顧客のニーズや課題を把握し、それに基づいて解決策を打ち出したり、新しいサービスを創出したりします。また、組織内の各部署が顧客体験に対して共通の認識を築く役割も果たします。この一連の取り組みが顧客の期待を超えた価値を提供し、ビジネス成果へと寄与します。

カスタマージャーニーマップで特に重要なのは、顧客の感情の起伏を正確にキャッチし、ビジネスの各タッチポイントでの具体的な体験を視覚的に明示化することです。こうすることで、企業は顧客体験の強化ポイントを効率よく特定し、顧客の満足度を向上させ、ロイヤルティを築くための具体的な改善策を策定する手がかりを得ることができます。カスタマージャーニーマップは、顧客が感じることや考えることを把握し、組織全体でUXをどのように向上できるかについての共通理解を生成する重要なツールなのです。

1-3.カスタマージャーニーマップの基本構造

カスタマージャーニーマップの完成形は、顧客の視点を中心に据え、彼らの製品やサービスに対する“旅”をビジュアル化したものとなります。基本構造としては様々ですが、一般的な例として、「ステージ」「タッチポイント」「アクション」「思考」「感情」の5つの要素から成り立つことが多いです。


まず「ステージ」は、顧客の購買プロセスを時間軸に沿って分解し、具体的なフェーズを明確にします。次に「タッチポイント」は、顧客と企業のサービスがどのように交わるかを示す接触点を指します。続いて「アクション」は顧客の具体的な行動、「思考」はその時点での顧客の考えや悩み、「感情」は顧客の感じる感情や喜びをマッピングします。これらの要素を通して、顧客がどのような経路を辿り、どのような体験をしているのかを明示的に表現し、企業はUX向上の糸口を探る手掛かりを得ることができます。カスタマージャーニーマップを適切に構築・利用することで、顧客理解を深め、サービス改善や新たな価値創造の道を切り拓くことが可能になります。

1-4.カスタマージャーニーマップの活用事例

多くの企業がカスタマージャーニーマップを活用し、UXを向上させるなど、成果を出しています。例えば、人材派遣やリクルートメント、アウトソーシングなど、多岐にわたる人材ソリューションを提供している株式会社パソナを見てみましょう。

同社がカスタマージャーニーマップを使用したのは新卒採用のWebサイトリニューアル時。就活生とのコミュニケーションの最適化を図りました。目的は「新規事業を創出できる人材を獲得すること」。カスタマージャーニーマップ作成プロセスでは、就活生の行動、感じたこと、考えたこと、そして課題を「就活開始から入社まで」として整理。特に3つのフェーズである「選考準備」「絞り込み」「選択」が重要で、各フェーズで感じる課題や情報ニーズを洗い出しました。結果、「十分な企業情報が得られない」という課題が明確になりました。新サービスとして、この課題を踏まえ、企業と学生が直接交流できるイベントを強化。Webサイトはそのサポートとして、イベント情報や企業情報を発信するプラットフォームへとリニューアルしました。この株式会社パソナの事例は、カスタマージャーニーマップが採用活動改善に多面的な改善を及ぼしたことを示しています。

参考:https://webtan.impress.co.jp/e/2013/11/27/16409

※2013年の古い記事で「広告」のようですが、リアルな作成の模様が描かれておりご一読の価値があります。



2.カスタマージャーニーマップの作成方法

カスタマージャーニーマップの基本や概要、事例について学んだところで、次は実際に作成してみましょう。このセクションでは、顧客が製品やサービスに対して体験する"旅"をビジュアル化する、カスタマージャーニーマップの作成方法をご紹介します。

2-1.各ステップまとめ

カスタマージャーニーマップ作成手順は、業界やビジネスモデルによって多少の違いはありますが、基本的には顧客が製品やサービスに最初に触れる瞬間から、購入、使用、そしてロイヤルティに至るまでのパスを探る経緯で進めます。

以下にカスタマージャーニーマップ作成手順を4ステップでまとめました。

カスタマージャーニーマップ作成の初めのステップであるペルソナとテーマの定義は、対象となる顧客とそのニーズ、ビジネスが解決しようとする課題や機会を明確にします。そしてこれに続くステップ2、ステップ3にてその行動分析と感情のマッピング、タッチポイントの明確化は、製品やサービスのあらゆるポイントで顧客が経験する現実を描き出します。最後のステップ4で顧客体験の最適化とビジネス価値の向上を目指します。


2-2.ステップ1:テーマとペルソナを決める

まずはカスタマージャーニーマップ作成におけるテーマを決めます。このテーマは、カスタマージャーニーマップ作成の核となる目的や焦点を明定し、すべての分析や改善策がこれに沿ったものであることを確認する基軸となります。テーマを設定する際には、ビジネスの短期・長期の目標、市場での位置付け、競合との差別化ポイントなどを考慮し、そしてそれが解決しようとしている顧客の具体的な課題やニーズが何であるかを情報収集しておくことが重要です。テーマは、カスタマージャーニーマップを通じて顧客体験のどの側面を最も強調し、最適化すべきかを明確に指示し、組織内の全部署に一貫した方向性を提供します。

例えば、あるビジネスのテーマが「オンラインショップページのユーザビリティ向上」であるなら、カスタマージャーニーマップでは顧客がオンラインストアを利用する際の流れや障壁、喜び、フラストレーションを文献やアンケート、また過去の自社データから情報収集し、それに基づいて改善策を立案します。ペルソナとテーマが連動し、お互いを強化しあうことで、カスタマージャーニーマップはビジネスと顧客双方にとって価値あるインサイトと改善の道を提示します。

テーマを決めたらペルソナを設定します。ペルソナは、ターゲット顧客の一般的な特性や行動を反映した架空のキャラクターのことです。これはマーケティングキャンペーンを設計する際の出発点であり、カスタマージャーニーマップ作成においてもこのペルソナが基本となります。

・ペルソナの要素

年齢、性別、職業、趣味、価値観など

ここで重要なのは、ペルソナとテーマがサービスの目標と連動していることを確認することです。

ペルソナ作成についての詳細はこちら

参考ペルソナの活用方法の決定版!作成から活用方法、活用事例までを徹底解説。

消費者のニーズや行動パターンが多様化する近年、ペルソナの重要性が再認識されています。ペルソナとは、簡単に言えば特定の製品やサービスのターゲットユーザーを具体的に表現したキャラクターのことを指します。し ...


2-3.ステップ2:ステージごとの顧客の行動を分析

顧客の行動には、そのサービスを知ってから実際に購入するといったいくつかのステージがあります。各ステージで顧客がどのような行動をとり、何を感じ、何を求めるのかを理解することが不可欠です。以下にBtoBの場合とBtoCの場合に整理して説明します。

 BtoBの場合

顧客の行動には、「リサーチ」「認知」「検討」「交渉」「社内検討」「購入準備」「実装」「成果」などのステージが考えられます。各ステージでの顧客のニーズや問題点を理解し、それに応じた対応を考えることが求められます。例えば『会計ソフトウェアのサービス』を検討する企業の各ステージの行動を予想してみましょう。


「リサーチ」新しい会計ソフトウェアを導入したい企業が市場に存在するソフトウェアの情報収集を開始。

「認知」特定のソフトウェアブランドや企業に初めて気づき、関心を持つ。

「検討」複数のソフトウェアを比較検討し、導入のメリットやデメリットを評価。

「交渉」選定したソフトウェア提供企業との価格や導入条件に関する交渉を行う。

「社内検討」社内の関連部署と導入の是非を議論。

「購入準備」契約書の作成や予算の確保などの事前準備を行う。

「実装」ソフトウェアの導入や設定、スタッフのトレーニングを実施。

「成果」導入したソフトウェアを使用し、効果やROIの測定を行う。



 BtoCの場合

顧客の行動ステージには、「リサーチ」「認知」「検討」「購入」「使用」「再購入」などが考えられます。消費者は、製品やサービスを購入するまでの過程で様々な情報収集や判断を行います。例えば『新しいスマートフォンの購入』を検討する一般顧客の各ステージの行動を予想してみましょう。


「リサーチ」新しいスマートフォンを購入したい消費者が、最新のモデルや機能に関する情報をネットで調べる。

「認知」特定のブランドやモデルに初めて気づき、興味を持ち始める。

「検討」複数のモデルやブランドを比較し、自分のニーズに合った製品を選ぶ。

「購入」店舗やオンラインショップで製品を購入。

「使用」購入した製品を日常生活で使用し、その機能や性能を体感する。

「再購入」製品の満足度や自身の新しいニーズに基づき、次回の購入を検討する。



2-4.ステップ3:タッチポイントを明確にする

「タッチポイント」とは、顧客とビジネスが接触する点です。オンラインであれば、ウェブサイトやアプリ、オフラインであれば店舗やイベントなどが該当します。各ステージでの顧客のタッチポイントを明らかにし、そこでの体験を改善するための施策を計画します。そしてそれぞれのタッチポイントをリリースするタイミングと数値目標であるKPI(Key Performance Indicator)を作成します。

2-5.ステップ4:顧客の感情から対応策を考える

最後に、ステップ3で考えた顧客の感情とそれに対するビジネスの対応策をマップに追加します。これは、顧客が体験する可能性のあるポジティブもしくはネガティブな感情と、それをどのように企業がサポートや改善を行うかを具体的に示します。

 感情のマッピング

設定したペルソナが経験する喜び、フラストレーション、興奮、怒りなどの感情をマッピングします。エンパシーマップ(共感マップ)を利用すると更に分かりやすく分析することができます。

エンパシーマップ(共感マップ)作成についての詳細はこちら(リンク)

 対応策の検討

ネガティブな感情やフラストレーションを最小限に抑え、ポジティブな感情を強化するための戦略を検討します。

このようにしてステップを踏んでカスタマージャーニーマップを作成することで、各フェーズにおける顧客とサービスの関係性を把握し、その改善ポイントを具体的に特定することができます。カスタマージャーニーマップは顧客理解の道具として、また戦略策定の基盤として、ビジネスの各方面で貢献を果たします。


3.カスタマージャーニーマップ失敗例

カスタマージャーニーマップは多くの企業で利用されている一方で、失敗例も存在します。本セクションではカスタマージャーニーマップ失敗に陥った一般的なケースを探ります。せっかく作成するならば、以下のポイントを押さえて効果のあるカスタマージャーニーマップを作成しましょう。

3-1.失敗例1:最初から細かく作り込んでしまう

カスタマージャーニーマップ作成の初期段階でよくある誤りは、最初から細かいポイントに焦点を置き過ぎてしまうことです。詳細への配慮は大切ですが、初期の段階では大枠を理解し、顧客の旅の概略を捉えることが先決です。

初めに、顧客の大まかな動きや感情のフローをマッピングすることに注力し、その後で具体的なアクションや感情の変動に迫っていくアプローチが効果的です。メンバーと話し合いを重ねてプロジェクトを進行させながら、細かいポイントを加えていくことで、カスタマージャーニーマップは徐々に洗練されていくので安心してください。

3-2.失敗例2:社内の関係者と協業せず作成してしまう

カスタマージャーニーマップはマーケティングや作成する中心部門だけのツールではありません。その有益性を最大限に引き出すためには、企業内の多岐にわたる部署を巻き込むことが必要です。

例えば、カスタマーサポートにあたる部署は、顧客の課題やフラストレーションを最前線で目の当たりにしています。営業部署は、顧客のニーズや購買動機を把握しています。一方で製品開発部署は、製品の機能やユーザビリティに対して深い理解を持っています。このように、各部署によって顧客に関する異なる視点を持っています。これらが、カスタマージャーニーマップをより豊かで多面的なものにしていくため、社内の関係者を巻き込むことはそれぞれのステップで顧客が感じている感情や体験を正確に描写するためには不可欠です。

カスタマージャーニーマップを部門間で共有しフィードバックを促すことで、各チームが持つ独自の知見や経験を反映し、全社規模での顧客体験の理解を深めることができます。また、この過程を踏んだ上で至った意見の一致は、社内の異なるチームが同じ理解を持ち、一貫したUXの向上策を推進する上で非常に価値があります。

カスタマージャーニーマップを各部署と共有する方法としては、ワークショップの開催や、定期的なミーティングでのプレゼンテーションなどが考えられます。また、オンラインツールを使用することで、リアルタイムでのフィードバックや更新を可能とし、関連する全ての部署と協力しながらカスタマージャーニーマップを進化させていくことも可能です。

3-3.失敗例3:作成者の視点で作る

カスタマージャーニーマップを作成する際、作成者自身の目線だけでマッピングを行ってしまうのは致命的なミスです。このツールはあくまで“顧客の視点”を表現するものであり、企業が提供したい情報ではなく、顧客が何を感じ、どう行動するかを真摯に捉える必要があります。

顧客の感情、疑問、障壁、動機などを理解し、その経験を可能な限り正確にマッピングすることで、真に価値のあるカスタマージャーニーマップが完成します。それを基に、ビジネスがどのように顧客の経験を向上させ、どのポイントで介入すべきかを戦略的に考える材料として使用できます。

3-4.失敗例4:情報収集をせず作成する

情報やデータに基づかないカスタマージャーニーマップは、現実のユーザーエクスペリエンスを正確に反映していない可能性が高く、その結果、戦略の方向性にズレが生じてしまう危険があります。

アンケートやインタビュー、過去の自社データの解析などを通して顧客の行動と感情を把握し、そのデータを基にカスタマージャーニーマップを作成します。定期的なフィードバックやデータのアップデートを行い、カスタマージャーニーマップが常に最新の顧客インサイトを反映している状態を保ちましょう。



4.カスタマージャーニーマップ作成後の活用方法

カスタマージャーニーマップ作成の目的である、顧客とのエンゲージメントを高めるためには、作成後の具体的な活用が不可欠です。以下では、カスタマージャーニーマップが構築された後、どのように企業内でその価値を最大化し、顧客体験を強化するのかについて掘り下げていきます。

4-1.タッチポイントごとに設定したKPIを目指す

カスタマージャーニーマップの有効性を最大限に引き出す上で、各タッチポイントに明確なKPI(Key Performance Indicator)を設定し、それを指針に各ステージの改善を行うことが重要です。これにより、企業が顧客体験の各局面で期待する成果を具体化し、目標に対する進捗を可視化する役割を果たします。

タッチポイントとは、顧客と企業がどのように接触するかの各瞬間を指します。例えば、オンラインストアを顧客に訴求したい場合、メールマガジンやSNSなどの各プロモーションがそれに該当します。この場合のKPIの設定は、「各プロモーションリンクのクリック数」「オンラインストアへの移行率」や「商品詳細の閲覧率」「カートへの追加率」などが考えられます。

KPIの策定は、カスタマージャーニーマップ作成時のステップ2で設定したステージごとの顧客の行動とリンクしていなければなりません。例えば、あるタッチポイントで顧客の感情が動いているとカスタマージャーニーマップから読み取れる場合、その原因を特定し、それに対応したKPI、例えば、「顧客のレビューやフィードバックの数」や「再購入率」を設定することが重要です。

KPIに基づく改善手順の例は次の通りです。

 ①KPIの選定

カスタマージャーニーマップを基に、各タッチポイントで何が重要かを理解し、KPIを定義します。

 ②データの収集

定めたKPIに沿ったデータを収集し、現状のパフォーマンスを把握します。

 ③分析と洞察

収集されたデータを分析し、どのタッチポイントが目標に届いていないか、あるいはオーバーパフォームしているかを理解します。

 ④改善アクション

分析から得られた洞察に基づいて改善アクションを計画し、実施します。

 ⑤評価と調整

実施されたアクションがKPIにどのように影響したかを評価し、更なる改善のためのアクションを定義していきます。

結論として、KPIはカスタマージャーニーマップをより効果的にするアイテムとなり、顧客体験を段階的かつ持続的に改善していくロードマップを提供します。それは最終的にUXを向上させ、ビジネスの成果を最大化するための、戦略的な取り組みとなるのです。


4-2.顧客が求めるものを適切なタイミングで提供する

カスタマージャーニーマップを活用し、顧客のニーズと期待を深く理解し、正確なタイミングで提供する戦略は、ビジネスにおいて積極的な結果を生む要素となります。顧客が求めるものを適切なタイミングで提供する、というシンプルながら実行が難しいこのプロセスは、顧客のエンゲージメントや満足度を飛躍的に高めます。

例えば、オンラインショップでの顧客の購買履歴や閲覧履歴、クリック行動等をデータとして取り込み、カスタマージャーニーマップと連動させることで、次にどのようなニーズが生まれ、どのタイミングでどのようなコンテンツを配信すべきかが見える化されます。

さらに、この戦略は顧客ロイヤルティの向上にも寄与します。適切なタイミングで価値を感じるコンテンツやオファーを提供されることは、顧客にポジティブな反応をもたらし、ブランドに対する好意的な印象を形成します。

これにより顧客との絆を強化し、長期的なビジネスの成果を実現する道を切り開くことができます。従って、カスタマージャーニーマップとデータに基づいたマーケティング戦略を組み合わせることは、今後のビジネスにおいて不可欠なスキームとなり得るのです。

4-3.複数の部署からメンバーを集めてチームを作り運用

作成時の注意点でもありましたが、カスタマージャーニーマップが完成して実際に運用する際にも企業内の多岐にわたる部署を巻き込むことが重要です。これにより各部門の視点を統合し、一貫した顧客体験改善策を展開するための重要なクロスファンクショナルチーム(CFT)が生まれます。

多面的な要素から成り立つ顧客体験は、各部署の様々なアプローチによって生まれるものです。これを適切に整理して、都度改善に取り組むためには、マーケティング、セールス、カスタマーサービス、製品開発といった部門の協力が不可欠です。これらの異なる部門からメンバーを抽出し、顧客体験に特化したCFTを構成することで、会社全体としての顧客理解と顧客体験向上の取り組みがより組織化され、効果を発揮します。

このCFTの構成によって、各部門から持ち寄られたデータやフィードバックを通じて、カスタマージャーニーマップの各タッチポイントを詳細に検証し、顧客の感情や体験を総合的に理解することが可能となります。次に、カスタマージャーニーマップに基づいて明らかになった問題点に対して、CFT内でブレインストーミングを行い、具体的な解決策や改善策を策定します。

そして、それを基にした戦略やアクションプランを共有することもできます。こうすることで、サービスが市場の変動や顧客ニーズのシフトに応じて迅速に対応することができます。

結果的にサービス自体が持続可能な成功と顧客価値の最大化を追求することができます。

4-4.運用期間を決めて効果を可視化する

カスタマージャーニーマップの効果を最大限に引き出すためには、その運用と評価を繰り返し、定期的な更新を行うことが欠かせません。一定の運用期間を設け、その間に集められたデータとフィードバックを基に、カスタマージャーニーマップを評価し、必要に応じて改善していくことが求められます。具体的な数値やKPIとともに進捗を可視化し、CFT内で共有することで、カスタマージャーニーマップに基づく取り組みの方向性や価値を明確にし、更なる改善へと繋げていくことができます。

まとめとして、カスタマージャーニーマップの作成後のアプローチは単に一度きりのものではなく、継続的な最適化と進化をもたらすものでなければなりません。常に顧客のニーズや市場の変化に対応している状態を保つことで、持続的な顧客価値を創出していきましょう。



まとめ

カスタマージャーニーマップは、ビジネスが顧客とのコミュニケーションを深化させ、サービス改善の洞察を得る重要な手法となります。本記事を通じて、カスタマージャーニーマップの概念と作成法、効果的な利用法、さらにはその作成後の運用ポイントについて詳しくお伝えしてきました。カスタマージャーニーマップは単なる一時的な取り組みではなく、顧客ニーズやビジネス環境の変化に柔軟に応える動的な手段でなければなりません。定期的な見直しとアップデートを行い、顧客体験の質を持続的に向上させていくことが求められます。そのプロセスにおいては、顧客の声やデータに基づいた改善が不可欠です。そして、カスタマージャーニーマップ作成と活用において指摘された注意点とコツを頭に置きながら、顧客の実際の旅を真摯に捉え、ビジネスが顧客に提供する価値の最大化を図りましょう。カスタマージャーニーマップを適切に活用し、顧客の声に耳を傾け、持続可能なビジネスの成長と顧客満足度の向上を実現していく道を共に歩んでいきましょう。


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