【実践】フィジビリティスタディ(フィジビリ)~目的や進め方・事例7選を解説


新しい事業や商品・サービスを立ち上げる際、本当に実現できるのか、どのようなリスクが想定されるのかといった懸念点があげられることがあります。そこで実施されるのが、実現可能性のための検証調査です。この調査はフィジビリティスタディ(※略して、「フィジビリ」。本稿では、正式名称の「フィジビリティスタディ」に統一します)と呼ばれ、プロジェクトが成功する可能性や事業の採算性についての検証をし、プロジェクトをこのまま進めるかどうかの検討が行われます。フィジビリティスタディは、外的要素と内的要素の両方から構成されており、多角的な見方が求められる点が特徴的です。

事業内容によって具体的な調査手順や位置付けは異なりますが、フィジビリティスタディはシステム開発や海外進出など幅広いシーンで活用されています。そこで本記事では、フィジビリティスタディの概要や目的、調査の進め方などについて詳しく解説しています。

フィジビリティスタディが実際に行われた事例や、調査結果についてもあわせて紹介するので、新規事業の責任者やリーダーの方はぜひ参考にしてください。

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目次

1.フィジビリティの概要

1-1.フィジビリティとは

フィジビリティとは「実現可能性」を意味する言葉で、英単語の「feasibility」に由来しています。ビジネスにおいては、新規事業・サービスに対して「実現できる可能性はどのくらいあるのか」を表す指標として扱われます。投資家や関連企業などにプロジェクトの成功見込みを説明する際は、「フィジビリティが高い・低い」といった表現を使用するのが一般的です。

また、フィジビリティは「フィージビリティ」と表記されることもあります。これは英語の発音からくるもので、意味に違いはありません。官公庁の文書などでは、「フィージビリティ」が使用されるケースも多く見られます。

1-2.フィジビリティスタディとは

フィジビリティスタディとは、新規事業や新規開発の立ち上げにあたって、そのプロジェクトを実現できる可能性がどのくらいあるかを調査することです。英語表記では「Feasibility Study」となることから、省略して「FS」や「F/S」と記載されることもあります。

フィジビリティスタディの実施によって、プロジェクトの実現可能性がわかるだけでなく、今後起こりうるトラブルを想定し、取り組むべき施策を検討することが可能です。

調査期間はプロジェクトの規模や内容によって異なり、短いものでは数週間から数ヶ月、長いものでは数年に及ぶケースもあります。プロジェクトに関する正確な予測を立てるには、技術面・経済面・外部環境といった観点から多角的な調査が必要です。

また、フィジビリティスタディの内容によっては助成金制度が利用できる場合もあるため、事前に確認しておくとよいでしょう。

1-3.フィジビリティスタディの目的

フィジビリティスタディを行う主な目的は、プロジェクトを正式にスタートさせるかどうか判断することと、プロジェクトを実行する場合の成功確率を上げることにあります。

自社でこれまでに取り扱い実績のないサービス・商品を開発する場合や、未経験分野の事業を立ち上げる場合、プロジェクトには大きな不安がつきものです。そこでフィジビリティスタディを実施することにより、現時点での実現可能性や解決すべき課題やその対策が明らかになります。

また、市場や競合他社の動向を調査することでビジネスモデルの解像度が高まるため、プロジェクトの方向性がブレにくくなる効果も期待できるでしょう。

大規模なプロジェクトの場合は、調査完了まで数年を要するケースも多く、企業によってはフィジビリティスタディ自体が1つのプロジェクトとして扱われることがあります。

1-4.フィジビリティスタディの歴史

世界初のフィジビリティスタディは、1933年にアメリカ大統領のフランクリン・ルーズベルトによって、テネシー川流域開発公社(TVA)が設立された際に行われたとされています。

TVAはテネシー川の流域にダムや原子力発電所を建設する公共事業を展開し、プロジェクトに着手する前にフィジビリティスタディを実施しました。このとき、経済面・技術面のみならず政治的な側面や環境保護の観点もふまえた多角的な調査が行われ、リスクを最小限に抑えながら事業化に成功しています。

公共事業が実現した結果、TVAの取り組みは雇用の安定化などさまざまな利益をもたらしました。この事例をきっかけに、大規模な建設事業が行われる際は民間企業でもフィジビリティスタディが実施されるようになったのです。

1-5.フィジビリティスタディのタイミング


フィジビリティスタディは、プロジェクトの構想がおよそ決まったタイミングで行うのが一般的です。

実現可能性が低いと判断された場合はプロジェクトの見直しが必要になるため、作業に着手する前に実施するのがよいでしょう。この段階であればまだ大きなコストが発生しておらず、不要な投資の軽減にもつながります。

ただし、下記の状況に該当するケースでは、フィジビリティスタディが不要になる場合があります。

  • 過去に類似したプロジェクトを実行し成功している
  • 過去に同様のフィジビリティスタディを行っている
  • プロジェクトの規模が小さく企業の運営に長期的な影響が少ない
  • 競合他社が類似した事業を行い成功している

2.フィジビリティスタディとPOCの違い

2-1.POCとは 

POCとは、プロジェクトを進めるにあたって、プロトタイプを活用して検証を行うことを指します。「Proof of Concept」の略称で、「ポック」または「ピーオーシー」と呼ぶのが一般的です。

POCでは、実際の商品やサービスに近い試作品を用いて、消費者のニーズを満たせるか・技術面で問題はないか・削減できるコストはないかといった項目をチェックしていきます。

POCを行うことで具体的な完成像をイメージしやすくなるため、プロジェクトの実現可能性や改善点をより正確に判断することが可能です。

2-2.フィジビリティスタディとの相違点

フィジビリティスタディはプロトタイプ作成の前段階で実施し、新規事業やサービスを本当に実現できるのか、成功させるにはどのようにプロジェクトを進行すべきかといったことを判断する工程です。

一方、POCではフィジビリティスタディの調査結果に基づいてプロトタイプを作成し、検証を行います。フィジビリティと比べて、より本番に近い環境が想定されているといえるでしょう。

フィジビリティスタディとPOCはそれぞれ異なる工程ですが、どちらも新規事業を実現するために重要な役割を担っています。

3.フィジビリティスタディを実施するメリット

3-1.失敗のリスクを軽減できる

フィジビリティスタディではプロジェクトの実現可能性について事前調査を行うため、新規事業が失敗するリスクを最小限に軽減できます。調査の過程で今後予測されるトラブルが見つかるケースも多く、事前に対策を検討できる点も強みです。

自社にとって未知の分野に挑戦する場合でも、事前調査と検証を繰り返すことで市場や競合他社の状況を掴めるようになり、事業化に向けて行動を起こしやすくなるでしょう。

3-2.コスト増加を最小限に抑えることができる

フィジビリティスタディによってプロジェクトのゴールがイメージできるようになるため、正確な予算を立てやすい点も大きなメリットです。

事前調査を実施したプロジェクトはある程度の採算性が保証されており、途中で大きな追加コストが生じるリスクは低い傾向にあります。

プロジェクトの進行中に大幅な調整を行う必要がなくなることから、想定外の費用が発生しづらくコストを予算内に抑えやすくなります。

4.フィジビリティスタディの4つの要素

4-1.業界・市場面

業界・市場におけるフィジビリティスタディとは、新規事業や商品・サービスが実現した場合に、市場でどのような影響を与え、どのような位置付けになるのかを評価するものです。

政治や経済・社会情勢・市場分析・業界の動向・市場競争の内訳といった外部要因を調査し、実施予定のプロジェクトがビジネスとして成立する可能性を予測します。

ここでは、政治・経済・社会・技術の4つの外部環境が自社に与える影響を分析する「PEST分析」や、5つの競争要因から自社の強み・脅威・収益構造を分析する「5フォース」などのフレームワークが役に立ちます。

4-2.技術面

技術面におけるフィジビリティスタディとは、新商品や新サービスを開発するうえで、自社に適切な設備が揃っているか・十分な技術リソースがあるのかを評価するものです。

また、プロジェクトの成功には、技術的な知識の習得や技術力を持った人材の確保も求められます。これらが不足していると、工場の設備が整っていても生産目標を達成できないというように、プロジェクトの実現は不可能になってしまいます。

市場ニーズを予測したうえで、求められる量を継続的に生産・提供し続けられるかどうかも重要な判断項目です。

4-3.財務面


財務面におけるフィジビリティスタディとは、新規事業に採算性があるのか、財政的に実行可能かどうかを評価するものです。

プロジェクトの実行によってかかるコストや事業化までに必要な投資額、自社にもたらされる最終的な利益を予測したうえで、投資収益率(ROI)を計算します。

投資家や関連企業から理解を得るためには、フィジビリティスタディの段階で財務面を明確にして説得力のある説明を行うことが重要です。

4-4.運用面

運用面におけるフィジビリティスタディとは、プロジェクトを最後まで完了できるかどうかを評価するものです。

具体的には、プロジェクト完遂に向けて社内で連携が取れる組織構造になっているのか・人的リソースを十分に確保できるのかを精査します。そのほかにも、社内の運用体制やノウハウの有無、プロジェクトに関する法的要件も重要な評価項目です。

フィジビリティスタディを通じて、社内で保有しているリソースやスキルを確認し、プロジェクト運用に不足がないかを判断できます。

5.フィジビリティスタディの進め方

5-1.課題点の明確化

フィジビリティスタディを実施する際は、最初に課題点の明確化を行います。課題をはっきりさせないままプロジェクトを進めてしまうと、想定外のトラブルで計画が頓挫したり、コストが大幅に増加したりする恐れがあるため注意してください。

まずは、プロジェクトにかかる人員や予算、現時点で考えられるリスクをすべて洗い出します。それらと社内の現状を照らし合わせることで、プロジェクト達成のために足りない点や事前に行うべき対策の内容が明らかになるでしょう。

また、ここで見つかった課題はできるだけ具体的な内容に落とし込み、社内で共有できるよう記録を残す必要があります。課題をわかりやすく整理することで、次のステップで効果的な施策を打ち出しやすくなります。

5-2.課題解決に向けたプロセスの決定

プロジェクトの課題を明確にしたあとは、課題解決に向けたプロセスを決定します。課題解決のための要求事項をリスト化し、達成までにかかる費用や期間の特定を行いましょう。

要求事項の具体例として、導入が必要なシステムや設備、改善すべき業務、新たな人員の確保などがあげられます。

すべてリストアップし終えたら、その内容をもとに、どの項目をいつまでに実行するのかといった詳細計画を組んでいきます。ここではアバウトな解決策ではなく、課題解決の確度が高い具体的な施策を検討することが重要です。

5-3.代替案の作成

フィジビリティスタディにおいては、計画の変更を想定して複数の代替案を用意しておくことが大切です。課題解決のために詳細なプロセスを決定していても、事前調査の結果、解決案の実施が困難であることが判明する場合があります。

検証結果に応じて柔軟に選択・変更できるよう、1つの選択肢にとらわれず多角的に課題を捉えるとよいでしょう。

どのようなトラブルでも臨機応変に対応できるよう準備することで、フィジビリティスタディを効率的に進めやすくなります。

5-4.評価項目の明確化

フィジビリティスタディでは最終的に評価を行うため、あらかじめ評価項目を明確化しておく必要があります。

評価項目は内部的な影響をはじめ、プロジェクトが外部に与える影響や競合他社との関係性、市場動向、法律関連などさまざまな角度から設定することが大切です。

プロジェクトに関するあらゆるケースを想定し、広い視点から正確な実現可能性を測れるように準備しておきましょう。

なお、フィジビリティスタディの評価についてはのちの項目でも解説します。

5-5.フィジビリティスタディの評価

フィジビリティスタディを実行したら、前のステップで明確化した評価項目に基づいて調査結果の評価を行いましょう。

フィジビリティスタディの評価内容は、報告書にまとめてプロジェクト担当者・関連企業・投資家などに提出するのが一般的です。

意思決定に大きな影響を与える重要な要素ですので、プロジェクトの実現可能性・予算・適法性・予算・想定期間などを正確に評価してください。

なお、フィジビリティスタディの評価基準は「プロジェクトで最終的に利益を得られるかどうか」にあります。

6.フィジビリティスタディの評価

6-1.戦略のインパクト

プロジェクトを実行するために必要なコスト・事業化した際に想定される売上高・最終的な利益・社会に与えるインパクトなどに関する評価を行います。

評価の結果、予算以上に膨大なコストがかかることや目標利益を達成できないことが判明した場合、そのプロジェクトの実現可能性は低いと判断されます。

なお、売上高や利益について評価する際は、成行予測の活用が効果的です。変動要因を加味したうえで数値が求められるため、現状の課題を発見したいときにも適しています。

6-2.競争優位性の持続力

競争優位性とは「競合企業が類似の事業を展開しても、自社が優位性を持続できる見込み」を意味する言葉です。

もしも新規事業や新商品がヒットし、市場でシェアを獲得した場合、競合他社も似たような戦略や対抗するような戦略を実行する可能性が高いと考えられます。

他社があとから参入してきた場合でも、自社が優位性を持続し続けられるかどうかを評価し、プロジェクトの見直しにつなげます。

6-3.経営資源の充足度

策定したプロジェクトに対し、自社の経営資源で戦略を実行できるかどうかを評価します。

ここでの経営資源とは、ヒト・モノ・カネ・情報のことを指しています。

また、自社のみではヒトやモノが不足する場合に、カネを利用して外部から資源を調達できるかどうかも重要な評価基準です。

自社でも外部に頼っても十分な経営資源を得られない場合、プロジェクトの実現は困難といえるでしょう。

6-4.事業損失のリスク

新規事業が失敗に終わってしまった場合に備えて、事業の損失が業績にどの程度影響を与えるのかを事前に評価しておく必要があります。

どれだけ綿密な戦略を考えても、新規事業が100%成功するとは限りません。

たとえば、新規事業を立ち上げ、市場ニーズが想定より伸びなかった・目標の売上や利益に到達しなかった・途中で方向性がズレてしまったなどの失敗例があげられます。

新規事業で得られるリターンよりも事業損失のリスクのほうが大きい場合、プロジェクトを中止することも検討しなければいけません。

7.フィジビリティスタディの事例

7-1.株式会社Enlytでの事例

https://enlyt.co.jp/

株式会社Enlytでは、ベトナム開発拠点のSupremeTechと共同で動画面接ツール「MiaHire」を開発し、プロジェクトにおいてフィジビリティスタディを実施しています。

MiaHireの開発がスタートしたのは、コロナ禍によってSupremeTechの採用方法や人的コストの見直しを迫られたことがきっかけです。

動画面接サービスの立ち上げにあたって採用市場を調査した結果、応募数に対して人的リソースが不足しており、採用活動に大きなコストがかかっている業種が複数存在することが判明しました。

また、株式会社Enlytでは自社内で開発を完結できる点や、動画面接サービスを利用することで面接に割くコストを削減できる点から、採算性に問題がないことも確認できました。

このように外部要因・内部要因それぞれの調査を行った結果、実現可能性が高いとの評価に至り、MiaHireの開発着手へとつながっています。

7-2.株式会社フクダ・アンド・パートナーズでの事例

https://www.fandp.co.jp/

株式会社フクダ・アンド・パートナーズでは、日立物流ファインネクスト株式会社(現:ロジスティードケミカル株式会社)からの依頼を受けて、「内陸型危険物倉庫群」8棟と「首都圏ケミカルセンター」2施設の建設について土地探しから設計監理までトータルマネジメントを行いました。その過程で、フィジビリティスタディも依頼されています。

まず、フクダ・アンド・パートナーズは新設予定の危険物倉庫の仕様を把握するために、日立物流ファインネクストが有する既存危険物倉庫の取扱品目や床荷重、空調を含めた危険物倉庫のスペックを調査しました。その結果をもとに事業継続可能な土地と開発プランを複数提案しています。

検証の結果、プロロジスが所有するBTS施設の集積パーク開発用の所有地が条件に合致したため、土地の一部を売買して危険物倉庫を建設しました。その隣地にはプロロジスがBTS型の普通倉庫を開発し、日立物流ファインネクストに賃貸を行っています。

また、意見が相反していた両者の要望を調整して合意形成を図り、双方にとって最適な施設の設計を実現しています。その結果、危険物管理を将来にわたって安定して行えるうえに、これまで分散保管していた商材を1箇所に集約できる施設が誕生しました。

7-3.新エネルギー・産業技術総合開発機構での事例

https://www.nedo.go.jp/koubo/AT522_100113.html

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構では、2021年に「分散型エネルギーリソース(DER)の更なる活用に向けたフィジビリティスタディ」の公募を行いました。

その結果、以下の10社が採択され、2022年6月から2025年3月まで本事業に取り組むことになりました。

  • 東京電力パワーグリッド株式会社
  • 学校法人早稲田大学
  • 株式会社三菱総合研究所
  • 関西電力送配電株式会社
  • 京セラ株式会社
  • 国立大学法人東京大学
  • 中部電力パワーグリッド株式会社
  • 東京電力エナジーパートナー株式会社
  • 東京電力ホールディングス株式会社
  • 三菱重工業株式会社

2021年度までの調査の結果、「DERフレキシビリティシステム」の活用が再生可能エネルギーの大量導入時における電力系統の混雑緩和に有効であると示されました。

そこで「DERフレキシビリティシステム」を日本に適用するために、今回のフィジビリティスタディでは、システム要求仕様のとりまとめとフィールド実証におけるシステム活用の実現性の評価を目的としています。

現在も上記10社によって、DERを最大限活用できる仕組みの実現と再生可能エネルギーの普及拡大を目指した取り組みが行われています。

参考:「電力系統の混雑緩和のための分散型エネルギーリソース制御技術開発に向けたフィージビリティスタディ」に係る公募について

7-4.文部科学省:Society5.0に対応した高度技術人材育成での事例

https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/kaikaku/miraikachisouzou/1403079.htm

文部科学省では、Society 5.0の実現に向けた高度技術人材の育成を目的として、「科学技術の社会実装教育エコシステム拠点形成事業」を立ち上げています。

そして、以下のフィジビリティスタディを実施する教育機関として北海道大学・金沢工業大学・名古屋工業大学・埼玉大学の4大学が選ばれ、文部科学省による支援が行われました。

  • 産学協同による教育体制(エコシステム)の形成
  • 工学分野における専攻・副専攻(メジャー・マイナー)、ダブルメジャーといった高度専門人材育成に必要な学部・大学院連結プログラムの先導的開発
  • 教員の教育業績評価制度の確立

4大学によるフィジビリティスタディは2018年の半年間に行われ、大学ごとに調査概要と結果をまとめた報告書が作成されています。

たとえば北海道大学では、学生とOB・OGにアンケートを実施した結果、大学内で有益な取り組みが多数行われているのにもかかわらず、工学院学生の履修が少ない実態が明らかになりました。

埼玉大学では、教員の業績評価制度の確立を図るために、工学系学生に対してアセスメントテスト「GPS-Academic27」を実施しました。さらにテスト結果の分析を大学内の研究会で発表し、学習成果の可視化に関する課題の検討に大きく貢献しています。

参考:科学技術の社会実装教育エコシステム拠点の形成

7-5.株式会社イースクエア:タンザニアでの事例 

株式会社イースクエアでは、タンザニアで干し芋の製造・販売事業のフィジビリティスタディを実施しています。

具体的には、現地で流通しているさつまいもの産地・種類・価格等の調査や、現地の小売店・スーパーでのテスト販売などを行い、タンザニアの一般市場における干し芋のマーケティングに取り組みました。

さらには、タンザニア最大級の国際見本市「サバサバ」に出展し、どのような反響を得られるのかを調査しています。

また、簡易製造設備を用いた干し芋の生産実験を実施し、気候や市場までのアクセスを考慮したうえで工場に適した土地の選定も行っています。

これらのフィジビリティスタディの検証結果は、発展途上国の課題解決型ビジネス「協力準備調査」にも応募され、実際に採択を得られました。

7-6.株式会社イースクエア:バングラデシュの事例

株式会社イースクエアによる2つ目の事例は、バングラデシュで実施された小規模電力モデル構築に関するフィジビリティスタディです。

このプロジェクトでは、バングラデシュの無電化地域に暮らす低所得者層を対象に、太陽光発電と高性能電池を活用した電力供給の実現を目標にしています。

フィジビリティスタディによって小規模電力供給モデルの実現可能性が明らかになっただけでなく、無電化地域の現状や二国間クレジット制度の構築可能性についての理解が深まるきっかけとなりました。

その後すぐにプロジェクトが実現したわけではありませんが、より現実的な事業モデルを考える足掛かりになったとの報告があげられているようです。

7-7.株式会社イースクエア:広島県とベトナムでの事例

株式会社イースクエアによる3つ目の事例は、広島県とベトナムの共同で実施された脱炭素技術の導入に関するフィジビリティスタディです。

2020年、環境省によって「脱炭素社会実現のための都市間連携事業」が発足し、広島県とベトナムのソクチャン省の間で脱炭素に関するノウハウの共有が行われました。

その際、広島県内企業である株式会社トロムソ・広川エナス株式会社が有する脱炭素技術の導入を目的として、フィジビリティスタディが実施されています。

トロムソでは、もみ殻から作るカール状の燃料カールチップをボイラ燃料の石炭の代替として利用する事業を導入し、広川エナスでは、エネルギー消費量の多い水産加工会社や大病院に太陽光発電システムとBEMS(ビルエネルギーマネジメントシステム)を導入し、それぞれの効果について調査を行いました。

その結果、脱炭素技術を活用することで、温室効果ガス削減事業において高い費用対効果が期待できることが判明しています。

参考:https://www.e-squareinc.com/business/fs.html
https://products.sint.co.jp/obpm/blog/feasibility#toc-4

まとめ

本記事では、フィジビリティスタディの詳細について解説しました。新規事業は企業に大きなチャンスをもたらす可能性がある反面、不確定要素が多いことからさまざまなリスクが伴います。さらに、多額の予算を投資するため、投資家や株主・関連企業などに対して根拠のある説明が必要です。

そこでプロジェクト開始前にフィジビリティスタディを実施することで、現状の課題や想定されるコスト、見込み利益などが明らかになります。その結果、対策を検討できるようになるため、リスク軽減につながりやすくなるでしょう。

自社でフィジビリティスタディを行うリソースがない場合は、コンサルティングや代行サービスを利用する方法もあります。新規事業を担う責任者の方は、本記事を参考にしてフィジビリティを行い、リスクを回避してください。

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