【図解付き】ポジショニングマップとは?効果的な作成方法と業界事例を解説

新規事業やサービスを生み出す際は、市場の状況を調査したうえで、競合に対して優位性を確立できるような戦略を考える必要があります。
この戦略立案に効果的なのが、ポジショニングマップです。ポジショニングマップによって市場における自社の立ち位置を可視化できるため、自社の優位性や差別化につながるポイントを見つける際に役立ちます。

しかし、ポジショニングマップの存在を知っていても、どのように作成すればいいかわからないという方は少なくないはずです。また、ポジショニングマップを作成したものの、求めていた結果が得られなかったケースも多くみられます。

そこで本記事では、ポジショニングマップのメリットや効果的な作成方法、業界での戦略事例などについて解説しています。ポジショニングマップと併用して使いやすいフレームワークも紹介していますので、ビジネス展開のための戦略を立てたい方はぜひ参考にしてください。

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目次

1.ポジショニングマップの概要

1-1.ポジショニングマップとは

ポジショニングマップとは、市場における自社や競合他社のポジションを視覚的に示した図です。
意味や目的が異なる2軸を設定したマトリクス上に、自社製品と競合他社の製品を配置して作成します。ポジショニングマップを作成することで企業ごとの立ち位置が明確になるため、自社の優位性や他社と差別化できるポイントを見つけたいときに効果的です。ポジショニングマップの用途は広く、既存製品のマーケティング戦略を決定する際だけでなく、新商品の開発や新規事業の立ち上げにも活用できます。

1-2.ポジショニングマップを作成する目的

ポジショニングマップを作成する主な目的は、他社にはない自社の強みが明確になる点です。ポジショニングマップでは自社製品が顧客から選ばれる理由を多角的に分析できるため、これまで気づかなかった魅力を見つけられるようになります。
また、ポジショニングマップの作成によって、市場における各企業の分布や競争度が視覚的にわかる点も大きな特徴です。そのため、競合他社が進出していないブルーオーシャンを発見したいときにもポジショニングマップは活用できるでしょう。

2.ポジショニングマップを作成するメリット

2-1.競合との差別化を狙える

ポジショニングマップを作成する大きなメリットは、分析の結果をもとに競合他社との差別化を狙いやすくなる点です。
どれだけ優れた製品やサービスでも、他社との違いを感じてもらえなければ市場のなかで埋もれてしまいます。ポジショニングマップによって自社独自の強みや他社が満たせていないニーズが明らかになるため、自社製品を選ぶメリットの的確なアピールが可能です。
他社では代替できない存在を目指すことで競争優位性が向上し、自社のブランディングにもつながるでしょう。

2-2.顧客のニーズとマッチしやすくなる

ポジショニングマップは、自社製品が顧客のニーズとマッチしているか確認したいときにも役立ちます。自社製品に高い独自性や優位性があっても、ターゲットとする顧客のニーズとずれている場合は競合他社が選ばれてしまう可能性があります。
ポジショニングマップを作成することで顧客のニーズを整理できるため、自社製品に求められている要素の分析に効果的です。さらに、ターゲット層からの需要を高める製品の開発やマーケティング戦略の立案にも活かせるでしょう。

3.ポジショニングマップの作成方法

3-1.自社と競合の製品の情報をまとめる

ポジショニングマップを作成する準備として、自社製品と競合他社の製品に関する情報をそれぞれ洗い出して整理しておきましょう。
具体的には、販売している製品の種類や特徴・ターゲット層・価格帯・強みや弱みなどの情報が必要です。このような情報をまとめておくことで、次の作業をスムーズに進めやすくなります。

3-2.KBF(購買決定要因)の洗い出し・抽出

まずは、自社製品に対するKBF(購買決定要因)をすべて洗い出しましょう。
KBFとは、顧客が商品を購入する際に決め手となる要素です。KBFは商品やサービスによって異なりますが、一般的に価格・デザイン性・機能性・重量・保証サービスなどが該当します。
自社製品のKBFを洗い出したら、そのなかでも自社のターゲット層がとくに重視する項目を抽出してください。たとえば商品を日傘・ターゲットを女性に設定する場合、「デザイン性が高い」「軽くて持ち運びやすい」の要素があげられます。

3-3.競合のKBFと比較する

自社製品のKBFを抽出したら、競合のKBFを分析して自社との比較を行いましょう。他社と比べることで、自社が競合と比べて優位な点・劣っている点が明らかになります。このとき、表を作成すると企業ごとの強みや違いが一目でわかるため便利です。
また、KBFを抽出する際は、アンケートや市場調査などを活用すると客観的で正確な分析が行えます。

3-4.ポジショニングマップの軸を決める

自社と競合他社のKBFを抽出したら、ポジショニングマップで分析要素となる軸を2つ決定します。
このとき、分析の目的に合わせた軸の選定が大切です。市場における自社のポジションを客観的に分析したい場合は、自社のターゲットとなる顧客がとくに重視するKBFを軸として設定するとよいでしょう。
一方で自社の優位性や独自性を分析したい場合は、競合他社と比べて優れているKBFを選ぶようにしてください。

3-5.自社・競合をマッピングする

ポジショニングマップの軸を決めてマトリクス表を作成したら、実際に自社製品と他社製品をマッピングしていきましょう。
軸の要素に強く当てはまる場合は端寄りに、どの要素にも偏っていない場合は中央寄りに配置するようにしてください。ポジショニングマップ内で位置が近い企業は製品の強みやターゲット層が似ており、とくに注視すべきライバルといえるでしょう。
また、どの企業も配置されていないゾーンがある場合、その部分はブルーオーシャンの可能性が高いと判断できます。

4.ポジショニングマップの軸となる5つの要素

4-1.商品の性質にもとづく軸

ポジショニングマップで一般的に使われているのが、商品の仕様や機能をそのまま軸として設定する方法です。
たとえばパソコンの場合では、メモリ容量や処理速度などが軸として採用されます。商品の特性を分析することで、他社と比べて優位性の高いポイントを見つけやすい点がメリットです。ただし、マニアックな内容になりやすいため、商品に詳しく専門知識を持っている顧客をターゲットとするケースに適しています。

4-2.顧客のメリットにもとづく軸

商品そのものの性質だけではなく、購入によって満たされる顧客のニーズや、その商品が提供する価値を軸として設定することもできます。
ニーズや提供価値は主観の要素が強いため、商品の仕様や性質と比べると感覚的になりやすい点が特徴です。たとえば、「高級志向」「アットホーム」といった表現が当てはまります。
自社商品のポジションについて、多くの人がわかりやすい伝え方で定性的に訴求したいケースにおすすめです。

4-3.商品の価格・品質にもとづく軸

商品の価格や品質にもとづく軸は多くの消費者がイメージしやすく、詳しい知識がなくても理解できる点が特徴的です。
基本的には、「高価格・低価格」「高品質・低品質」といった4つの要素から成り立つため、分析を進めやすく調査にかかる時間も抑えられます。
食材や日用品など、購入を決めるまで時間のかからない商品におすすめです。

4-4.商品の使用用途にもとづく軸

品質や価格で差別しにくい商品の場合は、使用用途にもとづいた軸の設定もできます。
商品がどのような機会や用途で使われるかを比較するため、顧客が実際に使用しているシーンをイメージしやすい点が特徴的です。たとえば、「仕事で使用する」「プライベートで使用する」といった要素があげられます。
どちらかというと、BtoCよりBtoB向けの商品に適しているでしょう。

4-5.競合商品にもとづく軸

自社製品だけでなく、競合商品との比較要素をもとにした軸の設定も可能です。
他社との違いを整理することを目的としているため、片方の軸で明確に差別化できる場合に適しています。たとえば、「他社より安くて短時間で済む」などの要素があげられます。
競合との差別化ポイントが明らかになるのであれば、商品の価格や特性などの詳細にはこだわらない点が特徴的です。

5.ポジショニングマップを作成する際のポイント

5-1.重要度の高いKBFを軸に選ぶ

ポジショニングマップの軸を設定する際は、顧客のニーズを満たすことを意識した重要度の高いKBFの選定が大切です。ポジショニングマップでは競合との関係性が明らかになるため、他社との差別化だけに注視してしまうことがあります。
しかし、独自性や優位性が高い商品でも、顧客のニーズとずれていれば選んでもらえません。他社と競うためだけでなく、顧客の購買行動につなげるために差別化を図る必要があります。
また、自社の得意分野だけピックアップするなど、軸に偏りが生まれないよう注意してください。

5-2.縦軸と横軸は相関性が低くなるようにする

ポジショニングマップでは、相関性の高い要素を縦軸と横軸に設定しないよう注意しましょう。2軸に相関性をもたせてしまうと、自社の優位性が見つけづらくなってしまいます。
たとえば「価格」と「品質」を軸に設定した場合、ポジショニングマップには「価格が上がれば質もよくなることが多い」といった一般的な関係性しか現れなくなります。
ポジショニングマップで的確な分析を行うためにも、2つの軸はできるだけ関係が薄く独立した要素を選ぶようにしてください。

5-3.具体的なターゲットを設定する

ポジショニングマップの効果を十分に発揮するには、具体的なターゲット像を明確にすることが大切です。ポジショニングマップは顧客のニーズにもとづいて作成するため、ターゲットが変わると軸も変わってしまいます。また、軸になる要素がはっきり定まらない場合、ターゲット像が曖昧になるかもしれません。
たとえば、「働く大人の女性」といっても、年齢や既婚・未婚、子どもの有無、職種などによって求めるニーズは異なります。
ライフスタイルや年収といった詳しい情報を絞ってターゲットを設定することで、ポジショニングマップの精度が上がりやすくなるでしょう。

5-4.空白の領域を探す

ポジショニングマップの大きな目的は、競争優位性のある独自のポジションを見つけることにあります。自社の強みを活かせる領域でも、すでに競合他社が進出している場合は差別化を図れません。
ポジショニングマップの軸を設定する際は、顧客にとって重要なKBFをピックアップするだけでなく、競合が存在しないであろう領域を想定した要素の選定が重要です。

5-5.状況に応じてリポジショニングを検討する

ポジショニングマップを作成した結果、競合他社のポジションが重なり自社が埋もれてしまうことがあります。その際は、独自性を発揮できる位置に自社を移動させる「リポジショニング」を検討するとよいでしょう。
リポジショニングを行うことで、競合他社と差別化して優位性を高めやすくなります。ただし、リポジショニングは実務面に影響を及ぼすため、実行に移すのは容易ではありません。社内の状況に応じた慎重な判断が大切です。

6.ポジショニングマップに関連するフレームワーク

6-1.STP分析

STP分析とは、自社の強み・ターゲット層・他社との位置関係などを明らかにし、事業の方向性やマーケティング戦略を決定するためのフレームワークです。
分析は、セグメンテーション(市場の細分化)・ターゲティング(市場の選定)・ポジショニング(自社の立ち位置の明確化)の観点から行います。ポジショニングマップを組み合わせることで、自社商品とマッチしやすいターゲット層やアピールポイントが明確化し、効果的なプロモーション戦略につなげやすくなります。

6-2.PPM分析(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)

PPM分析とは、市場において自社商品やサービスがどのように位置づけられるのかを分析し、今後の予算配分やマーケティング戦略の立案に役立てるためのフレームワークです。
市場成長率と市場占有率の2軸にもとづいて、自社商品を「花形」「金のなる木」「問題児」「負け犬」に分類します。ポジショニングマップと組み合わせることで、他社と差別化できるポイントの発見や優位性を保つための施策につなげやすくなります。

7.【業界別】ポジショニングマップの作成事例

以下の項目では、みなさんのポジショニングマップの作成の参考にしてもうべく、ポジショニングマップの事例を掲載しておきます。ここでの各ブランドのポジショニングは、著者やミモズカンパニーの主観的な感覚を元にしたものであり、市場調査の結果ではありません。必ずしも正確なものではないことをご了承ください。

7-1.アパレル業界

アパレル業界で主要なファストファッション系ブランド、「しまむら」「ZARA」「ユニクロ」「無印良品」「GU」でポジショニングマップを作成した結果は以下のとおりです。


ここでは、縦軸を「手軽さ・品質重視」、横軸を「コンサバティブ・トレンド重視」に設定しています。

ZARAではワンシーズンで買い替えることを想定し、トレンドの服を大量に展開しています。
一方、ユニクロでは洋服の種類を絞り、トレンドが変わっても長く着用できるものを販売している点が特徴的です。

また、GUはユニクロと同じくファーストリテイリンググループのブランドですが、ユニクロとは相反するポジションを狙ったことで相乗効果の実現に成功しました。
さらにGUは似たようなポジションとなりうるZARAに対して、価格を安くすることで差別化を図っています。

7-2.カフェ業界

日本国内の主要なカフェチェーン、「スターバックス」「上島珈琲店」「ドトールコーヒー」「コメダ珈琲」「ルノアール」でポジショニングマップを作成した結果は以下のとおりです。

ここでは、縦軸を「スタイリッシュ・庶民的」、横軸を「価格」に設定しています。

スターバックスは、都会的でおしゃれな雰囲気と質の高いコーヒーを強みとしたことで、独自のブランディングを確立しました。
さらに「サードプレイス」と呼ばれる家でも職場でもない第三の居場所としてのブランディングを打ち出し、単なるカフェ以上の存在となることで差別化を図っています。
また、ポジショニングマップを見ると、現在のカフェ業界では「スタイリッシュ」で「価格が低い」ポジションが狙い目であると読み取れます。

ただし、このポジショニングマップはあくまでカフェチェーンのみを配置しており、コンビニコーヒーを考慮していない点に注意が必要です。
新規市場の開拓を狙う際は、関連のありそうな業界を多角的に分析していくことが求められます。

7-3.ハンバーガー業界

ハンバーガー業界で主要な店舗、「マクドナルド」「ロッテリア」「モスバーガー」「ウェンディーズ」「フレッシュネスバーガー」でポジショニングマップを作成した結果は以下のとおりです。

ここでは、縦軸を「価格」、横軸を「庶民的・スタイリッシュ」に設定しています。

ポジショニングマップから、低価格・庶民的なポジションでマクドナルドとロッテリアがせめぎ合っていることがわかります。
一方で、フレッシュネスバーガーやウェンディーズは価格帯やターゲット層をずらし、独自のポジションを確立している点が特徴的です。

たとえばウェンディーズでは、アメリカンサイズのボリューミーなハンバーガーを打ち出すことで、マクドナルドの量では物足りなかった男性客や外国人観光客を獲得しています。
さらにファーストフードを敬遠する女性顧客にも焦点をあわせており、パスタやスイーツなどの商品にも力を入れています。

7-4.ビール業界

ビール業界の主要商品、「アサヒスーパードライ」「サントリーモルツ」「キリンラガー」「サッポロエビス」でポジショニングマップを作成した結果は以下のとおりです。


ここでは、縦軸を「キレ・コク」、横軸を「苦味・爽やかさ」としています。

ポジショニングマップによると、サントリーモルツとキリンラガーが近いポジションに立つ競合であるとわかります。
アサヒスーパードライは、それまでどのメーカーも対応していなかった「爽やか」で「キレがある」ポジションに進出したことで、爆発的な大ヒットにつながりました。
これまでビールといえば「苦味が強く重たい味」といったイメージが一般的でしたが、アサヒスーパードライによって「キレがよく何杯でも飲みやすい」という需要を満たしたことが人気の理由と考えられます。

このように独自性を確立したアサヒスーパードライは、海外にも進出し、現在もなお高い人気を誇っています。
また、現在は「爽やか」に特化した商品が市場にあまりないため、ここを狙った商品を展開するとヒットできる可能性があるといえるでしょう。

7-5.コスメ業界

コスメ業界で有名なブランド、「キャンメイク」「ケイト」「ちふれ」「ジルスチュアート」「ロムアンド」「ディオール」「シャネル」でポジショニングマップを作成した結果は、以下のとおりです。


ここでは、縦軸を「価格」、横軸を「低年齢層向け・高年齢層向け」としています。

ポジショニングマップから、年齢層によって人気のコスメブランドがある程度細分化されていることがわかります。
たとえば「キャンメイク」は、低年齢層向けのプチプラブランドで10代の学生に人気です。これはおしゃれの低年齢化が進み、ドラッグストアで手軽に買えるコスメの需要が高まっている影響が考えられます。

一方で、海外ブランドのディオールやシャネルは価格が高く設定されており、大人の女性から需要を集めている点が特徴的です。また、プチプラブランドからも似たような商品が展開されているものの、ディオールやシャネルは「ブランドイメージの高さ」で差別化されています。

なおポジショニングマップを見ると、現在のコスメ業界では「低価格」で「高年齢層向け」のブランドがブルーオーシャンの可能性が高いといえるでしょう。

8.ブランドポジショニングの失敗例

ブランドのポジショニングについての失敗例をご紹介します。失敗の定義については、著者とミモズカンパニーの主観に基づくものです。企業による公式発表ではありませんので、あらかじめご了承ください。もちろん、各企業を批判しているものではありません。

8-1.大塚家具

家具の販売事業を行う大塚家具は、ポジショニングの失敗が業界悪化の大きな原因とされています。もともと大塚家具はラグジュアリーなブランドイメージを確立しており、高級志向かつ高品質な商品展開を行っていました。さらに、当時の業界では珍しい会員制度を創業時から導入していたのも大きな特徴です。
過去の購入履歴から営業担当者が適切な提案を行うなど、顧客に寄り添ったサービスを取り入れています。結婚やマイホーム購入など人生の節目に大量購入されるなど、唯一無二の家具ブランドとして高い支持を集めていました。
しかし、ニトリなどの競合を意識してカジュアル路線へ方向展開を図った結果、新しいブランドイメージは定着せず、継続顧客の獲得にはつながりませんでした。大塚家具には長い歴史があったため、従来のブランディングが損なわれてしまったことも失敗の原因といえるでしょう。

8-2.スシロー

大手回転寿司チェーンのスシローでは、高級寿司「ツマミグイ」を一時期展開していたものの、わずか1年ほどで閉店しています。
ツマミグイの目的は、「まわらないスシロー」として、従来の店舗イメージとは異なる雰囲気や価格帯などで差別化を図ることです。具体的な施策としては、中目黒・浅草などに数店舗だけ出店し、おしゃれな店内のなかで一口サイズのお寿司や洋風にアレンジした海鮮料理を提供していました。しかし、顧客の需要は呼び起こせず、高級路線のブランディングは成功しませんでした。
このことからポジショニングは決して容易なものではなく、競合他社や市場の状況・顧客ニーズの有無・自社の強みなどを組み合わせながら戦略を考案しなければいけないことがわかります。また、スシローのように「安くて手軽」というポジションが確立していると、反するポジショニングへの挑戦はかえってハードルが高くなる傾向にあります。

8-3.キリンビバレッジ

キリンビバレッジでは、2014年11月に新商品として、ブラジル産の希少豆を100%使用した「キリン 別格 希少珈琲」を200円で売り出しました。
従来の缶コーヒーには「豆の希少さ」と「高価格」を掛け合わせた商品はなく、ポジションだけ見れば競合がいない独自性の高い商品です。しかし、売れ行きが芳しくなかったためか、1年後の2015年夏には販売を終了しています。
結果から推測すると、缶コーヒーユーザーには「希少な豆を使用した本格的な高級コーヒーを飲みたい」というKBFは少なかったことが考えられます。このように、競合他社と差別化できるポジションでも、顧客のニーズがなければ成功する可能性は低いといえるでしょう。

まとめ

本記事では、ポジショニングマップの詳細や具体的な作成方法、業界の作成事例などを解説しました。ポジショニングマップでは、どの要素を軸に選ぶのかが非常に重要です。

軸が異なるとポジショニングマップの結果も変わってくるため、ターゲット像を明確にしたうえで、顧客ニーズと関連性の高いKBFを取り入れるようにしてください。差別化できるポイントが見つからない場合でも、軸を変えてみると明確になることがあります。

また、ポジショニングマップを活用してブルーオーシャンを見つけることも可能です。市場の状況を整理し、まだどの企業も対応できていないニーズを満たせるポジションを狙うことで、ビジネスチャンスの大幅な拡大が期待できます。
ただし、競合他社がいないブルーオーシャンに見えても、自社がターゲットとする顧客のニーズがなければ売上にはつながりません。
独自性を意識するあまり、顧客が求めるものとずれてしまわないよう注意する必要があります。

また、ポジショニングマップだけでなく、今回ご紹介したSTP分析やPPM分析などのフレームワークと組み合わせるのも効果的です。自社の強みや立ち位置を見極めながら、競合に負けない戦略を構築していきましょう。

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